佐紀古墳群 測量調査
このほど、奈良市北部の佐紀古墳群が飛行機からのレーザー光線を使った測量調査が行われました。奈良市は財政が厳しく(なぜ、そんなに財政が厳しいのか、奈良市政はよくわからないのですが)、奈良市の研究員がクラウドファンティングで費用を集めてこのほど公開されました。
わたしも一口寄付しましたので、資料も送られてきました。
奈良新聞電子版(有料記事)は以下のように伝えています。
大王墓と考えられる大型前方後円墳が集まる奈良市の佐紀古墳群で航空レーザー測量が実施され、20日、成果が発表された。多くの古墳が宮内庁の陵墓に指定され、謎に包まれている同古墳群。測量調査した奈良市埋蔵文化財調査センター主務の村瀬陸さん(32)は「古墳群の実態解明に向けて重要なデータが得られた」と話す。今後の調査・研究に役立ててもらうため、基礎データを公開する予定だ。
佐紀古墳群は奈良盆地北部に位置し、4〜5世紀の大型前方後円墳が集中。古墳研究で重要視されているものの、多くは陵墓として宮内庁が管理、内部への立ち入りや発掘調査は原則認められておらず、不明な点が多い。
村瀬さんは個人で測量調査に取り組む費用を確保するため、広く支援を募るクラウドファンディング(CF)を2022年10〜11月に実施。調査研究には奈良文化財研究所アソシエイトフェローの柴原聡一郎さん(28)が協力した。
CFでは当初、垂仁天皇の皇后・日葉酢媛命(ひばすひめのみこと)陵と定められている佐紀陵山(みささぎやま)古墳(4世紀中ごろ)や、垂仁天皇陵とされる宝来山古墳(4世紀中ごろ〜後半)のドローンレーザー測量を計画したが、目標金額を上回る総額約504万円(支援者延べ340人)の支援が寄せられ、広範囲の測量が可能な軽飛行機による古墳群全体の測量に変更した。
測量調査の結果、従来の等高線間隔1〜2メートルの陵墓地形図では把握できない微細な起伏が明らかになり、各古墳の構造がより精緻に確認できるようになった。周辺地形も含めた古墳群全体を測量したことで、古墳の立地に関するデータも得られた。
佐紀古墳群の大王墓が造られ始めた4世紀は、文献の記載が少なく「謎の4世紀」とも呼ばれる。村瀬さんは「調査が少なく『謎の古墳群』とされる佐紀古墳群について、多くの情報が得られた。『謎の4世紀』の解明に向けて重要な手掛かりになる」と話す。
佐紀陵山古墳の墳丘の形は「佐紀陵山型」と呼ばれ、兵庫県最大の五色塚古墳(神戸市)など各地に同じ設計図で古墳が築かれたとみる研究もある。柴原さんは「古墳がどのように設計されたのかを考える上でも重要なデータ」とする。
村瀬さんと柴原さんは20日、CF支援者に速報成果を報告するオンライン講演会を開いた。21日には速報成果をまとめた資料集をウェブサイト「全国遺跡報告総覧」に掲載する予定。正式報告書は2024年度末に刊行し、地形の3次元データも公開する。
今尾文昭・関西大学非常勤講師(考古学)の話 佐紀古墳群を管理する宮内庁をはじめ、所在地の奈良市や県、文化庁が最新のデータを更新するのが本来の在り方だが、学術的な動機から、個人がクラウドファンディングの手法で測量調査を実施したことは、研究者にとって励ましになる。一つ一つの古墳だけでなく古墳群全体も測量したことで気付きが多くある上、今後、周辺の開発や発掘調査に際して課題も提示できる。現状の図面として高く評価でき、こうした動きが広がるのが望ましい。
また時事ドットコムニュースは以下のように伝えています。
佐紀古墳群を個人で詳細測量 クラファンで500万円調達―奈良の若手研究者
2023年08月21日07時05分
多数の陵墓が集まる奈良市の「佐紀古墳群」の歴史を解明しようと、レーザーを使った詳細な測量調査が行われた。実施したのは同市埋蔵文化財調査センターの村瀬陸さん(32)ら。市の事業ではなく、個人として調査を進め、500万円の資金をクラウドファンディングで調達したという。
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佐紀古墳群は奈良盆地の北側に広がり、4世紀後半から5世紀半ばにかけて20基以上の前方後円墳が造られた。全長200メートルを超える大型の前方後円墳は7基あり、陵墓などとして宮内庁が管理している。当時の様子を伝える史料は少なく、考古学の世界では「謎の4世紀」と呼ばれている。
古墳の多くは宮内庁が陵墓などに指定し、立ち入りや発掘調査は原則として認められていない。構造が分かる資料は、戦前に宮内省が作成した「陵墓地形図」があるものの、等高線の間隔が1~2メートルと詳細な読み取りは困難だった。
村瀬さんは正確な大きさを把握するには航空機を使って上空からレーザーで測量する必要があると判断。市は財政に余裕がないため、昨年10月からクラウドファンディングで協力を呼び掛けたところ、約50日間で500万円が集まったという。調査は今年2月に行われ、等高線が20センチ間隔の詳細な測量図が完成した。
測量データの解析を担当した共同研究者で奈良文化財研究所の柴原聡一郎さん(28)は「地形の3次元データはウェブ上に公開し、誰もが閲覧できるようにする。謎の4世紀を解明するきっかけになれば」と話した。
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