映画 馬場あき子「幾春かけて老いゆかん」
幾春かけて老いゆかん 歌人 馬場あき子の日々
2023年 / 日本 / 113分 / ヒッチハイク 配給
監督田代裕
語り國村隼
音楽渡辺俊幸
公式サイトhttps://www.ikuharu-movie.com/
本作は93歳から94歳にかけて歌人、馬場あき子の1年を見つめたものである。
本作は93歳から94歳にかけて歌人 馬場あき子の1年を見つめたものです。少女時代から短歌に親しみ、19歳で短歌結社「まひる野」に入会。以後、教員として戦後民主主義教育の現場にも身を置きながら経済復興による創造と破壊や60年安保などを駆け抜け、うつろな豊かさに至るまでの日本を見つめて1万首以上の歌を詠んでいます。歌への傾倒と同時に、初めて「隅田川」を観たことをきっかけに能の喜多流にも入門。80過ぎまで自ら舞い、新作能も書き下ろしてきました。精力的に活動する一方、親、夫、そして歌の仲間や能の友たちは、一人また一人と先立っていきます。今、馬場の胸に去来する思いとは…。
大阪・十三で上映されている第七芸術劇場のホームページから転載させていただきました。
http://www.nanagei.com/mv/mv_n1760.html
封切りの映画館での馬場あき子さんと監督さんのお話⇒https://www.youtube.com/watch?v=qoKI1bQaFxY
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(以下、先日の日経新聞夕刊 有料電子版より転載させていただきます。)
歌人・馬場あき子の日常を記録したドキュメンタリー映画「幾春かけて老いゆかん」が公開中だ。2021年秋の「馬場あき子全歌集」出版から間もない93歳から94歳の1年に密着し、歌壇の第一人者の人生観に迫る。
朝日歌壇の選者として投稿歌を一瞬で見定めえり分けていく様子、主宰する結社の歌誌「かりん」のオンライン編集会議、自身が書き下ろした新作能「利休」申し合わせ(リハーサル)の立ち会いと、コロナ禍にあっても精力的な日々をカメラは追い、随所に歌を差し挟む。タイトルは代表歌〈さくら花幾春かけて老いゆかん身に水流の音ひびくなり〉からとっている。
公開に先立つ本紙のインタビューでは、自身の「題材」について「大きな世界の中で貧しくなっていく日本、人間も粗雑になっていく日本、その日本で生きている自分を感じるわけ。そういうなかで目の前にあるものがどんな位置を保っているのかを考える。すると花一つからでも、それを背景に見えてくるものがある」と話した。映画には〈使ひ捨てのやうに手荒く棲(す)んでゐる地球さびしく梅咲きにけり〉などの歌が引かれる。
戦火を生き、安保闘争ではデモに加わりと、時代の軌跡と重なる半生を送ってきた。「女性の生き方には大変なものがあったけれど、60年前はがんばれば良い世の中が来るという希望があった。今の歌人をかわいそうに思う。今は、歌いにくい時代です。複雑で、どこをどう愛したらいいかとても難しい」
そんな令和の世にあって、「短歌ブーム」をどう見るのか。「短歌はモノローグ。さみしいからモノローグで本当のことがいいたくなる。心にわだかまるひそかな思いや憎しみ、愛をつぶやくことによってなぐさめられる」。反対に経済が豊かな時代には「心を述べなくていい」俳句がはやったと振り返る。
「でも私は絶望はしないの。自分がいままで生きてきた強さがある。がれきから太陽が出て、がれきに沈む風景をもう見ているのだから」。凜(りん)とした声でそう語った。
(桂星子)
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