山下真知事のインタビュー 毎日新聞より
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毎日新聞のインタビューに答える山下真氏=奈良市で2023年5月2日午後2時16分、村松洋撮影
4月の奈良県知事選で初当選した日本維新の会公認の山下真氏(54)が2日、毎日新聞の単独インタビューに応じ、前任の荒井正吾氏(78)による大型事業を見直す考えを明らかにした。
スポーツ施設や教育機関を整備する「大和平野中央田園都市構想」の中核事業や、飛行場機能を備えた「大規模広域防災拠点」は不要と指摘。こうした事業の見直しなどで財源を捻出し、選挙戦で掲げた教育無償化や子育て支援の充実を実現させる考えを示した。
山下氏の任期は3日から始まる。
4期16年にわたった荒井氏の県政運営について山下氏は「インフラ整備で一定の成果はあったと思うが、箱ものに偏重していたことは否めない」と指摘。特に、多額の公金を費やす大型事業は費用対効果を検証し、早急に事業を凍結したり縮小したりするか決めると明らかにした。
その上で、川西、三宅、田原本の3町で整備する「大和平野中央田園都市構想」に言及。県が建設を計画する大規模なサッカースタジアムと、県立の工科系大学は「必要ないと思う。構想全体について見直す必要がある」と語った。
さらに、県が五條市で建設を予定する「大規模広域防災拠点」も検証し直す。南海トラフ巨大地震などの大災害に備え、約720億円を投じて2000メートル級の滑走路を設ける計画だが、山下氏は「物資輸送の空港が必要なら伊丹(大阪空港)もある。ヘリポートなら学校などを使ってもいい」と述べ、必要性を疑問視した。
ほかにも検証が必要な事業として、平城宮跡を通る近鉄奈良線の移設や、
県が誘致を進めるリニア中央新幹線の新駅(奈良市付近)と関西国際空港を結ぶ鉄道輸送網の整備などを列挙。2023年度の県当初予算に計上されている一部事業費を執行停止する可能性に言及した。
今後の県政運営を巡っては、県議会(定数43)で自民党系会派(22人)が過半数を占め、維新公認の山下氏との間でねじれが生じることになった。山下氏は「知事も県議も互いに県民に選ばれた立場。県民にとって何が良いことなのかを一緒に考えたい。提出議案の必要性など、説明を尽くしていく」と話した。
一方、山下氏は教育現場の支援の必要性を強調。教員が抱える授業以外の事務仕事を外部委託するほか、新たに残業手当制度を設けられないかを検討し、負担軽減に取り組むとした。
維新が拠点とする大都市圏の大阪と、過疎地域を抱える奈良県では課題も異なるため、奈良では農業や林業など第1次産業の振興に力を入れたいと述べた。
また、大学病院など民間の総合医療機関が少ない県内の事情を踏まえ、県が主導する形で医療提供体制をさらに充実させていく必要があるとの認識も示した。
文化政策に関しては「古代の遺跡が豊富にあることは奈良の売り。その保存に支障が及ぶようなことはしないつもりだ」と述べた。
山下氏は選挙戦で、大阪など関西の他府県と連携を強化すると訴えてきた。現在は防災と観光の2分野に限定して参加している関西広域連合についても、ただちに全面加入すると明らかにし、「奈良の良さを関西全体にPRしていきたい」と語った。【榊原愛実、吉川雄飛】
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