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2023年3月12日 (日)

美ビット見て歩き ※114

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(大阪市立自然史博物館HPより拝借)

毎月奈良新聞で読むのを楽しみにしている、川嶌一穂さんの美ビット見て歩きは、大阪市立自然史博物館で開かれる、特別展「毒」です。

高校まで東大寺の近い林の中に住んでいたという体験から初めてうかがうお話は驚きました。ムカデに噛まれたのはともかくもマムシにも噛まれたという経験があるということです。

ポスターが印象的であったとのこと、HPから画像を拝借しました。興味深いお話です。ちょうど3月18日から大阪市立自然史博物館で開催されるということです。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *114 川嶌一穂

大阪市立自然史博物館特別展「毒」

写真 特別展「毒」ポスター(大阪市立自然史博物館、読売新聞社、関西テレビ放送提供)

 

 高校まで東大寺に近い林の中に住んでいたので、色々な「毒」体験をした。夏はムカデ。大きいものだとゆうに15cmはあった。咬まれるのはたいてい寝ている間で、寝返りを打ったりして知らずにこちらが踏みつけるのだろう、熱くて痛くて飛び起きる。本気で噛まれたときは、2週間ほどパンパンに腫れ上がり、冷たく冷やすくらいしか対処法はない。痛痒くなってくると、そろそろ治りがけだ。
ムカデは何故かゴムの長靴が好きで、たまに中に潜んでいることがあるので、長靴を履くときは必ず底まで手を突っ込んで、いないことを確かめなくてはならない。何しろ百本も足があるので(?)、逆さに振ったくらいでは落ちてこない。手を突っ込む時の怖いことといったらなかった。

 マムシにも一度咬まれた。雨の夜、父の大きな下駄を履いて数歩離れた外の風呂に行こうとしたとき、暗くて何が起きたか分からなかったが、とんでもない痛みで、すぐに駆け戻った。両親が、左足の小指に傷口が二つあるのでマムシだろうと言って、ナイフで傷をつけて、二人で代わる代わる口で毒を吸ってくれた。それから父の自転車に乗せられて病院に走り、血清を打ってもらった。血清があって事なきを得たが、二つの傷口はその後何十年も消えなかった。

 ヒルもいた。蜂にも刺された。セイヨウイラクサの群落に足を突っ込み、体調の悪いときは漆の木のそばを通っただけでかぶれた。自然に囲まれた昭和の子供の「毒」の記憶は鮮明だ。

 先月ある美術館を訪ねたおりに、他の美術展のポスターを貼ってあるコーナーで、異色の一枚に目がとまった。真ん中に、血が垂れているような大きな「毒」の文字。右側のショッキングピンクの血糊の上でセアカゴケグモが不気味な頭部を見せ、画面の左から蛇が鎌首をもたげている。その蛇を守るように生えるキノコとトリカブト。「きゃー!」

怖いもの見たさで、数日後、つい東京上野の国立科学博物館に行ってしまった。コロナ禍のこの3年間の人出の減少もどこ吹く風と、会場は人であふれていた。子供連れも多く、子供が親に説明している微笑ましい光景も見られた。

 入り口を入るとハブの巨大な模型が大口を開けて牙を剥いている。リアル過ぎて、やはりちょっと来たことを後悔する。オオスズメバチ、イラガの幼虫の模型が続くうちに、少しずつ慣れてきた。

 トリカブトや水仙、チョウセンアサガオなどは、毒のある植物として有名なのであえて触ることはしないが、ビワの種、隠元豆など身近な食べ物にも毒があると知って驚いた。隠元豆は胡麻よごしも天ぷらも大好きなので、これから熱をよく通すことに気をつけたい。加熱すると大丈夫らしい。

 会場に「日本における過去50年間の種子植物による食中毒」の表があったが、それによると件数は少ないが、死者数(900人以上)断トツ1位はジャガイモである。新芽や、日光に当たって葉緑素ができた部分にソラニンというアルカロイドが含まれる。家庭菜園や理科実習で収穫したジャガイモで集団食中毒が起きているそうだ。

 アジサイが全草に毒があることは知らなかった。夾竹桃は丈夫なのでよく高速道路の脇や公園に植えられている。これも全草に毒があり、青酸カリを上回る毒性を持つことはあまり知られてないように思う。

 山歩きの仲間からは、素人は絶対にキノコに手を出してはいけないと厳命されている。琵琶湖西岸のどこかの山だったと思うが、「火炎茸(カエンタケ)」という、その名の通り株立ちした、見た目も毒々しい真っ赤なキノコを見たことがある。これは世界的にもまれな「触ってもいけない」レベルの毒きのこで、近年日本各地で発生している。

 「鉱物に由来する毒」のコーナーに、人体を構成する元素のうち鉄、亜鉛、鉛などの微量元素は、取りすぎると「過剰症」、過ぎれば「中毒」で、足りない場合は「欠乏症」になる、という興味深い指摘があった。「毒」はその摂取量が問題である。まさに「毒と薬は紙一重」なのだ。

 「あ、これも毒か」と気付かされたのは、「人間が作った毒」だ。分解されにくいために拡散し、生物に蓄積する殺虫剤、PCB、ダイオキシンなどのPOPs(残留性有機汚染物質)である。またプラスチックごみの劣化によって細かくなったマイクロプラスチックも、長く環境に残り、回収不能だ。月ヶ瀬の友人が、里山に竹やぶが入り込んで困っていると言う。昔のように竹皮を包装材に利用すれば、一石二鳥と素人は考えるがどうだろう。

ユニークな切り口で、展示に工夫がなされた展覧会は楽しかった。たまには理系の展覧会もいいものだ。大阪展の会場である長居公園は、元の職場に近く、毎年夏は大池一面に咲くハスの花を楽しみに訪れた。今は全滅したと聞いて悲しい。

 前回(二月十日付)本稿の写真説明の文に誤りがありました。「光琳かるた『取り札』」を、「光琳かるた『上の句札』」と訂正致します。指摘下さった読者に御礼申し上げます。

=次回は令和5年4月14日付(第2金曜日掲載)=
  ・・・・・・・・・・・・・・・
かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。

メモ 大阪市立自然史博物館ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
 http://www.mus-nh.city.osaka.jp/ 

大阪市東住吉区長居公園1−23。電話=大阪市総合コールセンター06-4301-7285。
大阪メトロ御堂筋線「長居」3号出口・東へ約800m。JR阪和線「長居」東出口・東へ約1km。

会期は、来週3月18日(土)〜5月28日(日)。月曜休館(ただし、3月27日、4月3日、5月1日は除く)。

 

 

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