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2022年7月10日 (日)

美ビット見て歩き 大阪中之島美術館

毎月、奈良新聞で楽しみにしている、川嶌一穂さんの美ビット見て歩きは、大阪中之島美術館のことです。出来てたいへん評判ですがまだ行ったことありませんので参考になります。

 

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *107 川嶌一穂

 

大阪中之島美術館開館記念特別展「モディリアーニー愛と創作に捧げた35年―」

 

写真 アメデオ・モディリアーニ作『髪をほどいた横たわる裸婦』(1917年 油彩)大阪中之島美術館蔵(会場にて著者撮影)

 

ようやく開館した大阪中之島美術館を、先月訪れたのでレポートしたい。
「ようやく」というのは、こうだ。昭和58年(1983)に、大阪の実業家にして美術コレクター・山本發次郎(1887―1951)のご遺族から、佐伯祐三の油彩画や、墨蹟を中心とするコレクション約600点が大阪市に寄贈された。それをきっかけに、大阪市市制100周年記念事業として近代美術館建設構想がスタートして、構想から実に39年を経て今春ようやく開館した、というわけだ。
その間、「大阪市立近代美術館(仮称)」の「心斎橋展示室」で開かれたコレクション展を見に行ったり、そこから貸し出された佐伯祐三やモディリアーニ作品を見たりしたこともあった。バブル崩壊後「財政難で計画暗礁に」などという記事を時々目にしたが、何年かかってもこうして実現したのは、きっと息長く奔走された方々の存在があるのだろう。

これで大阪市の美術館は、敷地を住友本家から寄贈されて天王寺公園内に開館した、堂々たる建物と素晴らしいコレクションを持つ市立美術館(改修工事による長期休館の間、東京・サントリー美術館で今秋大規模コレクション展開催予定)、やはり中之島にある、住友グループから寄贈された珠玉の安宅コレクションを中心とする東洋陶磁美術館(来年秋までこちらも改修工事のため長期休館中)との三館体制となる。市レベルの美術館としては全国的にも例を見ない充実ぶりである。三館とも、江戸時代からの大阪商人の豊かさと、趣味の洗練と、心意気を象徴していて、同じ関西人として誇らしい。

写真のアメデオ・モディリアーニ(1884〜1920)作『髪をほどいた横たわる裸婦』は、彼のあまりにも若すぎる晩年の傑作。
イタリアはフィレンツェのはるか西に位置するリヴォルノという海岸都市で生まれたモディリアーニは、1906年にパリに渡り、エコール・ド・パリ(パリ派)の一人として活躍し、35歳という若さで亡くなった。

本作も山本發次郎が大切にしていたコレクションだったが、アメリカ軍による本土空襲が激しさを増す大戦末期の1945年、芦屋の自宅から故郷の岡山に軍用トラックで疎開させることになった天皇の御宸翰(自筆文書)の中に忍ばせて運んだ。奇策はみごとに成功したが、芦屋の自宅は空襲に遭い、美術品はすべて焼失した(本展『図録』)。

戦後、本作品はいったん売却されるが、1989年に大阪市が19億円で購入した。何たる英断!今や、百年前の作品とは思えない新鮮な輝きを放つ、新美術館の顔となる作品である。

モディリアーニの描く人物は、紙を貼り付けたような目をしていることが多いが、この裸婦は白目も瞳もちゃんと描かれ、強い視線を見る者に投げかける。ポーズそれ自体は、マネの『オリンピア』やティツィアーノの『ウルビーノのヴィーナス』など、ヨーロッパ絵画の伝統を踏まえた裸婦のポーズだが、今にも画面から飛び出して来そうな生々しさである。

それでもなお、絵が下品でないのは不思議だ。1913年にパリに渡り、モディリアーニと親しくなった藤田嗣治が、彼のことをこう記している。
「強い酒を日に必ず一、二本平らげながら絵を描いていた。…随分乱暴な恰好をしてモデルを恐れさせた事だった。反して出来る画は優しい美しいものであった。」<藤田嗣治著『腕(ぶら)一本』>さすが藤田の透徹した観察である。

20世紀の初頭に、ヨーロッパの田舎から、またアジアの東の果てからそれぞれの文化と伝統を背負った若者が集まり、互いに影響を与えながら、後にエコール・ド・パリと呼ばれる一時代を築いた。モディリアーニの本作品に描かれた、ヨーロッパ絵画の伝統にはなかった黒い輪郭線に、藤田の影響が見て取れると思う。

なおモディリアーニが藤田を描いた素描が、本展第2章「1910年代パリの美術」に出ているのでお見逃しなきように。

行ったことのない、しかも出来立てほやほやの美術館を訪れるのは、滅多にない心踊る瞬間だ。肥後橋駅から歩くと、大きな彫刻のような国際美術館の入り口の向こうに、巨大な黒い「箱」が見えた。「近代」美術館にふさわしい斬新な建築デザインだ。

中に入って、展覧会場の入り口が分からず不安なまま廊下を進むと、突然大空間が開けた。何階分もある長い階段やエスカレーターが交差している。内部空間もおしゃれだ。しかし、帰りにエレベーターの場所を係りの人に聞いて、教えられた方向へ行ったのだが、それでも見つからず、うろうろした。素晴らしい空間デザインに、観客にとって動線の分かり易いサインがあれば、さらに格好いいと思う。

 

=次回は8月12日付(第2金曜日掲載)=
  ・・・・・・・・・・・・・・・
かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。

 

メモ
大阪中之島美術館5階展示室。 大阪市北区中之島4−3−1。電話06(6479)0550。京阪中之島線渡辺橋駅(2番出口)より南西へ徒歩5分。大阪メトロ四つ橋線肥後橋駅(4番出口)より西へ徒歩10分。JR大阪環状線福島駅(2番出口)より南へ徒歩10分など。会期は7月18日(月・祝)まで。11日(月)は休館。https://nakka-art.jp

 

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