幻の能「八重桜」復曲上演へ奔走 毎日新聞より
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毎日新聞奈良版4月15日付に奈良八重桜の会の会長の上田トクヱさんと興福寺寺務老院の多川俊映さんの、幻の能『八重桜』の復曲上演の記事が大きく伝えられています。クラウドファインディングや寄付が目標通り集まり2026年までには上演を果たしたいとのことです。大いに期待したいと思います。
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「奈良の八重桜」描く幻の能、復曲上演へ 10年来の夢に奔走
奈良
毎日新聞 2022/4/15 10:12(最終更新 4/15 10:12) 931文字
奈良県花・ナラノヤエザクラの普及に力を注ぐ「奈良八重桜の会」(奈良市)が、長らく上演が途絶えたままになっている室町時代の能「八重桜」の復曲(復活上演)に取り組んでいる。奈良を舞台に名木の八重桜をたたえる作品で、2026年までの初演を目指している。【塩路佳子】
春日明神へ参詣した臣下が、花守の翁(おきな)から春日山の縁起を聞いた夜、明神が姿を現し、名木の八重桜をたたえて舞う――。
能「八重桜」のあらすじだ。復曲して上演につなげようという活動は、同会の上田トクヱ会長(77)の10年来の思いから動き出した。
題材となるナラノヤエザクラは4月中旬から咲く遅咲きの桜で、紅色のつぼみが開くと淡いピンクになり、散り際に再び赤くなる愛らしい花。平安時代の歌人、伊勢大輔が宮中で美しく咲くさまを「いにしへの 奈良の都の八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」と詠んだことで知られる。鎌倉時代の仏教説話集「沙石集」には、興福寺から藤原道長の娘・中宮彰子に枝が献上された話が記されている。
上田さんは花姿と花をめぐる物語に引かれ、「ナラノヤエザクラを能にしたい」と常々周囲に語っていた。しかし、台本の書き手や費用の問題などから「夢物語」のまま10年が過ぎていた。
事態が進展したのは2021年夏。会の名誉会員である興福寺の多川俊映・寺務老院が、能楽研究者の西野春雄・法政大名誉教授から能「八重桜」の紹介を受けたことだった。西野名誉教授によると、能の前半と後半の間に狂言方があらすじを説明する「間狂言(あいきょうげん)」も伝わっており、江戸時代初期まで上演されていたと推測される。別名は「三笠山・東圓(とうえん)堂」。台本を読んだ多川寺務老院は「奈良らしく、完成度の高い作品」と評していた。
「現代に『八重桜』をよみがえらせたい」。上田さんの思いに火が付き、21年は会の設立20周年に当たることから復曲への機運が一気に高まった。資金はクラウドファンディングや会への寄付で調達した。節付けと舞の型付けは奈良にゆかりのある金春流能楽師に依頼し、数年かけて上演できる形になるという。上田さんは「能を通じてナラノヤエザクラを後世に伝えることができたらいい」と話し、晴れ舞台を楽しみに待つ。
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