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2022年4月11日 (月)

ナラノヤエザクラのこと、奈良新聞より

「ナラノヤエザクラ」のことをくわしく奈良新聞10日付は伝えています。有料電子版より。

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育てよう奈良県の花「ナラノヤエザクラ」 接ぎ木で増殖、奈良公園で植栽進む

 

 小倉百人一首に収録された伊勢大輔の歌でも知られるナラノヤエザクラ。その品種が1922(大正11)年に東大寺知足院で“再発見”されて今年で100年の節目を迎えた。1968(昭和43)年には県の花に選定され、一時は約2800本が奈良公園などに植栽されたものの、もともと樹勢が弱く強風で木が倒れたり、根頭がんしゅ病による生育不良、枯死もあって現在は約700本に減少。県は改めて接ぎ木による増殖を図り、同公園植栽計画に基づく育成環境の整備に取り組んでいる。

 

 国の天然記念物に

 

 知足院のサクラは1922年に、東京帝国大学教授で植物学者の三好学博士が見付け、平安中期の女流歌人・伊勢大輔が「いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな」と詠んだサクラと同じ品種と鑑定。文学上や歴史的な価値が認められ、翌1923年に「知足院ナラノヤエザクラ」として国の天然記念物に指定された。

 

 開花はソメイヨシノなどより約1カ月遅く、4月下旬から5月上旬に清楚(せいそ)な花を付けるのが特徴。赤褐色の葉も同時に芽吹くタイプで、花は初め赤みがあり、徐々に白くなるという。

 

 カスミザクラの栽培品種とされ、種子はほとんどできず、繁殖力が極めて弱いが、戦後に県が接ぎ木による増殖に成功。現在は奈良公園事務所が知足院近くにある約1244平方メートルの苗圃(ほ)の一部を使い毎年約100本を接ぎ木。鹿の食害に遭わないよう5、6年かけて樹高3、4メートルまで育てた上で公園内などに植栽を進めている。

 

 増殖の元になるのは1987(昭和62)年に県森林技術センターが知足院の木から組織培養で育成したナラノヤエザクラ。その枝から穂木を取り、オオシマザクラの台木に接ぎ木する。また新たにバイオ技術で育成された木を使った接ぎ木も行われている。

 

 苗を管理するのは、同事務所の中谷貴司さんと武田順亘さんら。2人は同サクラの増殖に20年以上、取り組んでおり「苗圃の隅で高木の陰になる場所に植えた桜は、それだけで生育が悪くなる。日当たりや水はけの良さが重要」と育成の難しさを説明。また移植先の奈良公園については「地盤が悪く根が深く張らないこともあり、3年前の台風で多くの倒木が出た」と課題も指摘する。

 

 奈良公園では外来種のナンキンハゼが繁殖するなど、従来の植生にさまざまな影響が出ており、同事務所は景観の回復に必要な植物を外から持ち込むのでなく、現地で育てる取り組みを実施。苗圃では各種のサクラやマツ、ヤナギ、モミジ、若草山のカヤ(ススキ)も育てられている。

 

 ナラノヤエザクラの接ぎ木は活着率が7、8割。その後も育つ前に枯れるケースがあり、中谷さん、武田さんは「接ぎ木した後は祈るばかり」と話すが、同時に「やりがいのある仕事。樹木は手を入れれば入れるだけ、応えてくれる」とも。成果が出るまでに数年かかる仕事だが、意欲を失わず、地道な取り組みを続ける。

 

 三好博士が鑑定した知足院のナラノヤエザクラは2009年の強風で倒れ、枯死したが、県森林技術センターが組織培養で育てた同じ遺伝子を持つ木を東大寺と県などが14年に同地に移植、育成している。ただ同院は普段、閉じられているため、一般の人が花を見ることはできない状態。

 

 今月下旬ごろから開花

 

 一方、県が15年に実施した調査によると、奈良公園内では、春日野国際フォーラムの東側、若草山山麓に至る傾斜地に位置する茶山園地を中心に約700本のナラノヤエザクラが確認されており、4月下旬ごろから開花、清楚な姿を楽しめる。また県庁に隣接する奈良公園バスターミナル南側には植樹された木と説明板が設置されていて分かりやすい。

 

 ナラノヤエザクラは県の花で奈良市の市章にもデザインされているものの、開花時期が遅く、葉も同時に芽吹くため花が目立たないなど、実物は意外に知られていない面も。そんな状況を改善しようと、2001年には市民グループ「奈良八重桜の会」(上田トクヱ会長)が発足。奈良公園で進む植樹作業ととともに、ナラノヤエザクラの魅力発信に取り組んでいる。

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奈良新聞のコラム「国原譜」10日付でも以下のように書かれています。

 

桜の季節が足早に通り過ぎていくと惜しんでいたら、まだ後に奈良の八重桜が控えていますよと教わった。咲くのは4月下旬以降になるという。

 ただこの奈良の八重桜、県の花に選定され奈良市の市章にもデザインされるなど広く親しまれているのに、本物を見る機会は意外に少ない。

 何しろ元となっているのは大正期に東大寺知足院で確認された一株の木。接木による地道な取り組みで増殖が図られているが、樹勢が弱く育てるのが難しいため容易には増えない。

 知足院の木は2009年に強風で倒れ枯死。その後にバイオ技術でよみがえった後継樹が移植されたが、根付くまでまだ時間がかかるよう。

 それでも奈良公園内には約700本が確認されているというから、探してみたい。また東大寺周辺では東塔跡西側や大仏殿入堂口の西側、転害門にも植樹されていると案内がある。

 全国各地の県の花を一覧しても、奈良の八重桜ほど地域性、歴史性の豊かな花はほかに見当たらない。百人一首に詠まれたイメージとも少し違う気がする白い花。あと半月待って、ぜひ本物と出会いたい。(松)

 

 

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