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2021年7月11日 (日)

美ビット見て歩き96

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川嶌一穂さんの美ビット見て歩き96です。大阪で開かれている特別展「あやしい絵展」です。

奈良新聞の連載も96回とのことです。年内には100回を迎えそうです。

コロナ禍のなか、展覧会も少なかったり、取材も執筆もたいへんだと思います。からだをご自愛いただきますようにお願いします。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *96 川嶌一穂

 

大阪歴史博物館
特別展「あやしい絵展」

 

写真 北野恒富筆《淀君》 大正9(1920)年 耕三寺博物館蔵 通期展示(大阪歴史博物館提供)

 

 2年前には想像すらできなかったSFのようなパンデミックの中、6月下旬に多くの美術館・博物館が再開したのは、とりあえず有難い。
 生まれついての怖がりで、3年前に開かれた中野京子さん監修の「怖い絵」展は行かなかったが、今年の春の花の頃、東京国立近代美術館で開かれた「あやしい絵」展には、なぜかすっと足が向いた。

 会場の第1章「幕末〜明治」のはじめに、幕末の絵師・歌川国芳と、明治中頃まで生きた月岡芳年の版画が並ぶ。目を背けたくなるような凄惨な絵だが、師の国芳が描くのは、「恐ろしい物語」にすぎない。が、芳年描くところの「魁題百撰相(かいだいひゃくせんそう)」は違う。戦い抜き、敗れ去った鳥居元忠ら歴史上の人物を描きつつ、実は題名も「海内百戦争」と読める、戊辰戦争で散った若者を描いた「見立て絵」だという。
それを知ってこの絵に向かうと、芳年が描こうとした敗者の無念や矜持が、生理的嫌悪を超越して、惻々と胸に迫ってくる。明治維新の一面を描いた石光真人編著『ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書』(中公新書)が思い出される。

 第2章「明治から大正」へ進むと、会場がぐっと世紀末らしくなり、ビアズリーをはじめとする妖しい作品が続く。鏑木清方『妖魚』、速水御舟『京の舞妓』、梶原緋佐子『老妓』、甲斐荘楠音『横櫛』など、見応えある大作が多い。
 中でも今回、北野恒富(きたの・つねとみ。明治13年<1880>―昭和22年<1947>)の描く『淀君』に圧倒された。本欄で4年前に「恒富展」を紹介したが、今回はじめて出会ったかのように新鮮に感動した。
 実は、恒富はもう二作、淀君を描いている。本作制作の翌年、まだ頬のふっくらした娘時代の茶々を描いた『茶々殿』と、制作年不詳の、本作よりかなり若い頃を描いた『淀君』の二作である(馬場京子著『北野恒富/中村大三郎―現代日本美人画全集3』昭和53年・集英社刊)。
 伯父の信長に攻められ、父・浅井長政が自害した折に、信長の命により兄の万福丸が秀吉に処刑される。柴田勝家と再婚した母に三姉妹も従うが、秀吉に攻められて勝家とお市は自害。お市は「浅井と織田の血を絶やさぬように」と自筆の手紙を書いて三姉妹の身柄を秀吉に託す。その兄と母と義理の父の仇である秀吉に愛されて、19歳の茶々は側室になる。いかに戦国の世とは言え、何という過酷な人生か。
 絞りの小袖を鎧のように身にまとい、蝋人形のように血の気のない顔をした最期の淀の、名家の血を引くプライドと、我が子を守ろうとする気迫を、恒富は余す所なく描き切った。

第3章「大正末〜昭和」には、4月の本欄で紹介した小村雪岱の筆になる「おせん」の挿絵も出ている。作品総数がおよそ150点もある本展には、「これは無理!」という絵も多いし、東京展に出品されていた上村松園の『焔』などが、大阪展で見られないのは非常に残念。とは言え、この凶々しい世の真夏の暑気払いにぴったりの企画だ。

  ・・・・・・・・・・・・・・・
かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。

=次回は8月13日付(第2金曜日掲載)=

メモ 大阪歴史博物館 大阪市中央区大手前4−1−32。電話06(6946)5728。http://www.mus-his.city.osaka.jp/ 大阪メトロ中央線・谷町線「谷町四丁目」駅9番出口から徒歩5分。会期は8月15日(日)まで(展示替えあり)。火曜日休館(8月10日は開館)なのでご注意下さい。

 

 

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