このほど第165回直木賞に澤田瞳子さんが決定されました。おめでとうございます。
朝日新聞の紹介です。「「星落ちて、なお」(文芸春秋)で第165回直木賞に決まった澤田瞳子さん。
澤田さんは77年生まれ、京都市在住。奈良仏教史の研究者を経て10年にデビュー。直木賞は15年に「若冲(じゃくちゅう)」で候補になって以来、5度目の候補入りだった。受賞作は幕末明治に活躍した絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の娘が主人公の歴史時代小説だ。」
わたしは『星落ちて、なお』は読んでいませんが、いままで何冊か読んでいます。
奈良、京都を中心とした素晴らしい小説を書かれています。
最初に読んだ『龍華記』。炎上する興福寺五重塔に龍を見た表紙です。以下の青字はアマゾンの本の紹介です。
「南都焼討──平家の業火が生む、憎しみと復讐。著者渾身の歴史小説。
高貴な生まれながら、興福寺の僧兵に身を置く、範長。
興福寺を守る使命を背負う範長の従兄弟、信円。
そして、南都焼討からの復興に奔走する仏師、運慶。
時は、平家が繁栄を極める平安末期。高貴な出自でありながら、悪僧(僧兵)として南都興福寺に身を置く範長は、都からやってくるという国検非違使別当らに危惧をいだいていた。検非違使が来るということは、興福寺がある南都をも、平家が支配するという目論みだからだ。検非違使の南都入りを阻止するため、仲間の僧兵たちとともに、般若坂へ向かう範長。だが、検非違使らとの小競り合いが思わぬ乱戦となってしまった。激しい戦いの最中、検非違使別当を殺めた範長は、己の犯した罪の大きさをまだ知らなかった──平家が南都を火の海にし、人々を憎しみの連鎖に巻き込もうとすることを。」
『与楽の飯』
奈良時代、大仏造仏のそばの炊屋を舞台にして描かれています。晩年の行基さんも出てきます。当時をよく描かれていると思います。
「奈良時代、東大寺の大仏造営事業が進む中、故郷から造仏所に徴発された真楯。信仰心など一片もないのに、仲間と共に取り組む命懸けの労役は苦難の連続。作事場に渦巻く複雑な人間模様も懊悩をもたらすばかり。だが、疲れ切った彼らには、炊屋の宮麻呂が作る旨い料理があった。一膳の飯が問いかける仏の価値とは!? 食を通して造仏に携わる人々の息遣いを活写した、『若冲』『火定』の著者が贈る傑作時代小説。」
最近読んだのは奈良時代の疫病を書かれた『火定』。時代を越えて、いまのコロナ禍と重なります。この作品も直木賞候補になったということですが、たいへんな力作だと思います。
「――己のために行なったことはみな、己の命とともに消え失せる。(中略)わが身のためだけに用いれば、人の命ほど儚く、むなしいものはない。されどそれを他人のために用いれば、己の生には万金にも値する意味が生じよう。(本文より抜粋)
時は天平――。
藤原氏が設立した施薬院の仕事に、嫌気が差していた若き官人・蜂田名代だったが、高熱が続いた後、突如熱が下がる不思議な病が次々と発生。
それこそが、都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせる“疫神(天然痘)"の前兆であった。
我が身を顧みず、治療に当たる医師たち。しかし混乱に乗じて、病に効くというお札を民に売りつける者も現われて……。
第158回直木賞と第39回吉川英治文学新人賞にWノミネートされた、「天平のパンデミック」を舞台に人間の業を描き切った傑作長編。
解説:安部龍太郎」
また最近まで、毎日新聞に額田王、天智天皇、天武天皇などの登場する小説『恋ふらむ鳥は』を連載されていました。
澤田瞳子さんは奈良にもよく来られます。ますますのご活躍を祈念します。
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