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2019年9月14日 (土)

美ビット見て歩き*77

毎月楽しみにしている川嶌一穂さんの今月の美ビット見て歩きは、日本の前衛ーー山村徳太郎の眼・山村コレクション展「抽象と人間臭い前衛のはざ間」です。
図録では「『具体』と日本の前衛1950年代-1980年代」という意味の英語が書かれているということです。

 

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 美ビット見て歩き 私の美術ノート *77 川嶌一穂

 

「集めた!日本の前衛―山村徳太郎の眼・山村コレクション展」

 

写真 兵庫県立美術館会場入口(著者撮影)

 

9月1日に終了した「原三渓の美術―伝説の大コレクション展」(横浜美術館)や、9月23日まで開催中の「松方コレクション展」(東京上野・西洋美術館)など、このところコレクションの成り立ちをテーマとした美術展が目立った。関西まで巡回しないのが残念だが、どちらも富豪による明治大正期の大コレクションである。
しかし戦後の財閥解体や相続税などの税制改革で、大規模な美術コレクションはもう不可能、島根県の足立美術館(昭和45年創設)が最後だろうと、以前ある画商の方に聞いたことがある。
本展の主人公・山村徳太郎(1926―1986)は、大正末年に兵庫県西宮市に生まれ、山村硝子株式会社の社長業のかたわら、戦後の現代美術、とくに前衛的な作品を集めた実業家である。
ちなみに、本展覧会のチラシや図録に、「『具体』と日本の前衛1950年代―1980年代」という意味の英語のサブタイトルが載せてあるが、日本語のタイトルよりこの方がよく内容を表している。
「具体」というのは1954年に結成された、吉原治良(よしはらじろう)を中心とした関西の抽象美術のグループである。津高和一(つたかわいち)、白髪一雄(しらがかずお)らの作品は目にした方も多いだろう。
山村のコレクションのはじめは、津高和一の「母子像」(1951年)で、今展でも最初に置かれている。淡い色彩と単純な形で構成された、しんみりするような抽象画である。山村はこう語っている。「…今から思えば、これが私の大へん幸せなコレクション活動の始まりであったのです」と。
「具体」というと、天井から吊るされた綱につかまって揺れながら、バケツでぶちまけた絵の具を足で掻き回して「描く」白髪一雄が真っ先に思い浮かぶが、当時は正直、そんなものが「芸術」なのか?と思っていた。しかし今虚心に白髪の作品に向かうと、制作方法は奇抜でも、作品には生命の原初的な力があふれていて、野太い品格を感じる。
山村は、自らのコレクションを、「アブストラクト(抽象)と人間臭い前衛のはざ間」と呼んだ。発想の新奇さだけを競うような現代美術は苦手だが、この会場には全体にふわっとした人間味がある。抽象絵画にもカタチの痕跡を感じる作品が多い。まさに言い得て妙だ。
評価の定まった古典的な作品を集めるのは、財力があれば何とかなる。しかし評価の定まっていない作品を購入するには、確かな眼が必要だ。山村は初期から計画的に作品を集め、時には流出した「具体」作品を買い戻しにヨーロッパに出かけた。
59歳という若さで山村が亡くなった翌年、コレクションは兵庫県立美術館に一括収蔵された。お陰で、私もコレクションを可能にした山村の眼と胆力と、戦後復興のエネルギーを共有するような「具体」作品に今回あらためて出会うことができた。

 

=次回は10月11日付(第2金曜日掲載)=
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かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。

メモ 兵庫県立美術館 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1−1−1〔HAT神戸内〕。電話078(262)0901。阪神岩屋駅から海側へ徒歩8分。またはJR神戸線灘駅から同じく徒歩10分。休館日:月曜日(ただし9月16日、9月23日は開館し、翌火曜日の9月17日、9月24日休館)。会期は9月29日(日)まで。

 

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