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2018年8月12日 (日)

美ビッド見て歩き*「縄文  1万年の美の鼓動」

近頃、ジョーモン、「縄文」という言葉を良く聞きます。
毎月楽しみにしている美ビット見て歩きは、東京国立博物館で9月2日までひらかれている特別展「縄文  1万年の美の鼓動」です。
奈良新聞に掲載されていました。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *65 川嶌一穂

東京国立博物館特別展「縄文―1万年の美の鼓動―」

写真 深鉢形土器・東京都あきる野市出土・高さ56cm(会場内撮影スポットにて著者撮影)

 「縄文」と聞くと、有名な「火焔型土器」や「遮光器土偶」などを思い浮かべて、形は面白いが、全く異次元的で、私たち現代の日本人とは断絶したものだと思っていた。ところが現在、東京・上野の国立博物館で開かれている「縄文」展を見て、考えが変わった。


 会場に入ってすぐ、縄文時代草創期(紀元前11000年~同7000年)の青森県出土「微隆起線文土器」が、わたしの縄文イメージをいとも簡単に壊してくれた。高さ30cmほどの、底の尖った土器だが、思ったより薄手で、指の巾ほどの浅い溝が水平に彫られている。口縁を少し外に広げ、襞を作って波打たせている。全面の縞模様もうるさ過ぎず、何とも洗練されたデザインである。


 続く福井県出土、縄文時代前期(紀元前4000年~同3000年)の「赤彩鉢形土器」にも魅了された。高さ10cmほどの器で、焦げ茶色の地に、濃い赤色で、木とも花とも見える抽象的な連続模様が施されている。色といい形といい、桃山時代の茶陶と見紛うばかりの洒落た造形である。
広い会場の第1室で、この2点を見ただけで、私は1万年以上続いた縄文の美意識が、それが終焉を迎えてから2000年以上も経過した現代の私たちに、ひそやかに、しかし確かに受け継がれていると感じた。


本展第3章「美の競演」で、世界各地で作られた古い土器がそれぞれ数点ずつ展示されているが、縄文土器はそのどれと比較しても制作年代が古く、かつ技術的にも高度である。
実は、放射性炭素年代測定法による、最古の縄文土器の「1万2000年前の作」という測定結果は、世界全体から見て余りにも早いので、何らかの条件が作用した誤った値だと考える考古学者がいたほどである(「カラー版日本美術史」美術出版社・2003年刊)。


縄文時代中期(紀元前3000年~同2000年)および後期(紀元前2000年~同1000年)の傑作、縄文の国宝6件が揃う会場第4章は、さすがに圧巻である。火焔型土器1点と土偶5点すべてに、その制作者や、制作者を支え作品を享受した集団の自信が満ち溢れている。


西日本に縄文遺跡が少ないことを反映しているのか、この大規模な縄文の展覧会が関西に巡回しないのは、本当に残念だ。東京に出掛ける予定のある方は、ぜひ半日を上野の博物館でお過ごし下さい。北海道から沖縄まで分布する縄文に、日本の成り立ちを探ってみたくなること必至です。
台風の逆走する酷暑の夏、みな様どうかご自愛を!

=次回は平成30年9月14日付(第2金曜日掲載)=
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かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。

メモ 東京国立博物館平成館 東京都台東区上野公園13-9。電話03(5777)8600。JR上野駅公園口より徒歩10分。会期は9月2日まで。月曜日休館(8月13日は開館)。http://jomon-kodo.jp/

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