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2018年2月10日 (土)

美ビット見て歩き 私の美術ノート *59 

毎月楽しみにしている川嶌一穂さんの美ビット見て歩きは、お正月をはさんで2か月ぶりに、奈良新聞に載っています。

武器を飾り美しく、とあり「たがねの華ーー光村コレクションの刀装具」です。

 

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *59 川嶌一穂

大阪歴史博物館特別展『鏨(たがね)の華―光村コレクションの刀装具』

写真 「鬼念仏・笛吹地蔵図目貫」大月光弘作 1組のうち鬼念仏図目貫 江戸時代・19世紀 根津美術館蔵=大阪歴史博物館提供

 昭和30年代、テレビが普及する前の庶民の娯楽と言えば映画、それもうちは東映の時代劇が多かった。冬は奈良の小西通りで夫婦饅頭(回転焼きのこと)を買って行って、頬張りながら見るのがお定まりだった。その回転焼き屋さんを最近見ないな、と思っていたら、少し南に行った椿井市場の中に移転したらしい。それはぜひ行かねば!

 大川橋蔵の月形半平太、中村錦之介の一心太助など思い出すとキリがない。今でも「飛び道具とは卑怯なり」とか、「小次郎、敗れたり」などという映画の中の台詞が、ひょいと口をついて出て来ることがあって、自分でも笑ってしまう。「鯉口を切る」などという表現も、詳しく分らないままに覚えてしまった。

 意外や意外、今は若い人の間で刀剣がブームらしい。伝統はモノが残ること以上に、それに価値を見出すヒトがいて始めて次代に伝えられるものだから、それは嬉しいことだ。 

 明治10年(1877)、大阪島之内で富裕な実業家の長男として光村利藻(みつむら・としも)が生まれた。彼が成人した明治30年というと、維新を担った世代が退場し、江戸文化も日々に廃れていく時代だが、その頃、彼は製造技術の継承も危なくなっていた刀剣や刀装具の収集にのめり込んでいった。 

 しばらくして彼の事業が行き詰ることになるが、幸いにも彼のコレクションは、昨年2月の本欄でも紹介した「鉄道王」根津嘉一郎が一括購入し、今では根津美術館の誇るべき蔵品となっている。 

 写真の目貫(めぬき)は、大津絵から抜け出たようなユーモラスな表情をした鬼を象ったもの。5センチに満たない小さなものだが、胸に下げた鉦を叩く音が聞こえてくる気のする生き生きとした造形だ。目貫は、もともと刀心と柄(つか)を固定させる釘の頭の飾りで、その上に柄巻が施されるが、次第に実用を超えて装飾になっていった。 

 目貫だけではない。会場の刀装具の何と美しいことか。武器である刀を何故こんなに飾る必要があるのだろう。 

 それで思い出したことがある。以前、アメリカ人の入国審査官と飛行機で隣り合ったことがあった。彼は、9・11以後、拳銃の携行が義務付けられ、武器を持つことのストレスがすごいのだと話した。戦いのなくなった江戸時代の武士とて、その気になれば人を殺傷できる刀を常に身に着けることの重圧は大きかったに違いない。その責任を引き受ける矜持の印として、また緊張感を和らげる慰めとして、刀は美しくあるべきだったのではないだろうか。さて、みな様は会場でどう感じられるだろうか。
 

=次回は平成30年3月9日付(第2金曜日掲載)=

・ ・・・・・・・・・・・・・・・

かわしま・かずほ

元大阪芸術大学短期大学部教授。

メモ 大阪歴史博物館 大阪市中央区大手前4-1-32、NHK大阪放送会館隣り。
電話06(6946)5728。
地下鉄「谷町四丁目」駅②号・⑨号出口。
会期は3月18日(日)まで。
火曜日休館なのでご注意下さい。4倍程度の単眼鏡を持っている方はお忘れなく。

 

 

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