『奈良・大和を愛したあなたへ』
国際日本文化研究センターの名誉教授であり、奈良県立図書情報館長である、千田稔先生の『奈良・大和を愛したあなたへ』という本を読みました。小西通りの啓林堂書店の店先にたくさん積まれていていました。
「本書は『喜楽』に2006年から2012年にかけて書名と同じタイトルで連載した書簡風の文を一部補訂し文集としたものである」
「明治よりこの方、いわば往年の奈良を訪れた、あるいは奈良に関心を持った各分野で名の知られた人々の筆によってならに寄せる思いを書かれた文に寄り添ってわたしからその方々へ差し上げた手紙という形式をとってみた」
という本です。
(クリックすると拡大します。あと今東光さま、菅政友さま)
とても読みやすい文ですが、そのためにはずいぶん資料を読まれたことだと推察します。
そして41名にも及ぶ相手を拝見し著者との文でのやりとりを拝見すると、実に多くの著名人が奈良を訪れ、著作などで残しているものだと思います。
その中で、「奈良は、現代日本にとって特に重要な象徴であるといってよい、今日の日本は奈良の示した範にに倣ってこそ、現在この国を混乱に陥れている西欧の文明及び文化の圧倒的な影響を同化吸収して、自己みずからの文化を形づくり、こうした従属的な状態を脱却すべき勇気を逮得することができるのである」(ブルーノ・タウト)
とか「奈良公園は他の公園とは全く別格である」(志賀直哉)
「東日本の大震災による原子力発電所の破壊といっても過言ではない大惨事によって世界の中では、これまで、まあまあ優等生であった日本が、その存在感を喪失していくような思いにかられるのです」(千田先生)
など印象的な文が多く紹介されています。
東方出版。1600円+税。
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