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2017年2月11日 (土)

美ビッド見て歩き*48東京・根津美術館

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いつも楽しみにしている美ビッド見て歩きですがことし初めて奈良新聞に掲載されました。東京の根津美術館です。

美ビット見て歩き 私の美術ノート *48 川嶌一穂

東京・根津美術館 興福寺中金堂再建記念特別展示「再会―興福寺の梵天・帝釈天」展

写真 東京・根津美術館のアプローチ=著者撮影

 早いもので2月ももう10日。寒さ本番だが、まさに「冬来りなば春遠からじ」。日の光は確かに明るくなった。
 永遠の名品・尾形光琳筆の「燕子花(かきつばた)図屏風」を所蔵する東京・青山の根津美術館の一室で、今回タイムリーな展示があったのでご紹介したい。
数年前に建て替えられた館の設計は、2020年東京オリンピック「新国立競技場」のやり直しコンペで採用された隈研吾氏。玄関へと続く長いアプローチの道路側は竹を一列に植えただけ、反対側の壁材は細い古竹。そのさり気なさは、さすが『負ける建築』の著者・隈氏の設計だ。街の騒音を完全に遮断しないが、ここから先は美術館だとはっきり分かるその絶妙な空間が心地よい。
高低差の大きい地形をうまく利用した広い庭園は「鉄道王」根津嘉一郎(1860-1940)の元私邸の一部で、庭造りに数年を要したと言われている。樹木に集う野鳥も多く、先日は池で翡翠(かわせみ)を見た。
庭園に茶室が何棟も点在することからも分かるように、根津は茶人としても活躍した。根津ばかりではない、近代の財界人に茶の湯を嗜み古美術を収集した数寄者(すきしゃ)は多い。阪急電鉄の創業者で、根津と同じ甲州出身の小林一三も茶人として活躍し、その美術コレクションが「逸翁美術館」(大阪府池田市)として公開されているのはご存じの通り。
本欄第2回で取り上げた藤田美術館の藤田傳三郎とは、「交趾(こうち)大亀香合」の入札を巡って熾烈な戦いを繰り広げ、根津が敗れている。
明治の後半は産業構造の大変化が行渡り、旧公家や旧大名家がそれまで持ちこたえていた家宝を次々と手放し始めた。海外に渡ってしまった名品も数えきれない。この頃に根津や三井財閥の益田鈍翁(どんのう)らが茶の湯を中心としたネットワークを形成し古美術品を数多く収集したことは、日本美術にとってこの上なく幸いだった(齊藤康彦著『根津青山―「鉄道王」嘉一郎の茶の湯』)。
仏教美術も然り。「再会―興福寺の梵天・帝釈天」展で公開中の帝釈天立像は、明治期に興福寺から流出し、根津美術館の所蔵するところとなった。もと東金堂でこの帝釈天と一対だった梵天像が、今回、中金堂再建を記念して、はるばる奈良から東京までお出ましになった。
両像ともに平重衡による南都焼討ち後の興福寺再建の際に仏師・定慶により制作されたものだが、ぼってりと波打つ装飾的な衣文が印象的だ。流出した方の帝釈天像は、かなり修復されているように見えた。りりしいお顔の梵天様にゆっくり苦労話を聞いてもらったことだろう。
 1月はお休みを頂いたので、今回が今年の第1回となる。本年もご愛読のほどをお願い致します。

 =次回は3月10日付(第2金曜日掲載)=
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かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。

メモ 根津美術館 東京都港区南青山6−5−1。電話03(3400)2536。地下鉄表参道駅から徒歩10分。http://www.nezu-muse.or.jp/
会期は3月31日(金)まで。原則として月曜日、ならびに2月20日(月)~3月3日(金)休館。

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(鹿鳴人、追記)

日経新聞のHPに「再会―興福寺の梵天・帝釈天」展のことが報じられていました。→日経新聞


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