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2016年12月10日 (土)

美ビット見て歩き 私の美術ノート *47

いつも楽しみにしている、川嶌一穂さんの美ビット見て歩き、奈良新聞に載っていました。
中ノ島の大阪市立東洋陶磁美術館の「台北國立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆」展です。
会期は12月10日(土)から来年3月26日(日)まで(年末年始および原則として月曜休館)とのことです。
昨年秋、台北の國立故宮博物院を訪れましたが、たいへんな来館者でした。この機会に大阪で拝見できるというのはとても良いチャンスだと思います。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *47 川嶌一穂
大阪市立東洋陶磁美術館 「台北國立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆」展
写真 青磁無紋水仙盆 汝窯 北宋・11世紀末~12世紀初 台北國立故宮博物院蔵 撮影=六田知弘(大阪市立東洋陶磁美術館提供)
 もう10年も前になるが、1月の授業が終るのを待ち兼ねて、はじめての台湾に飛んだ。
故宮博物院創立80周年記念「北宋書画、北宋汝窯(じょよう)、宋版図書」特別展を見るためだ。
中でも北宋の画家・笵寛(はんかん)、郭熙(かくき)、李唐(りとう)三人の山水画の名作が同時に公開されるのは後にも先にもないという話を聞き、それは大変、とばかりに駆け付けたのだ。
 三作とも「山水画」というイメージからは程遠い大作で、同じ壁面に並んで異様な存在感を放っていた。
他にも有名な玉(ぎょく)の珍品「翠玉白菜」や「肉形石」を見たり、館内に置かれた記念スタンプの印章を、章句の意味は分らないが漢字が美しいのに惹かれて、手帳にペタペタ押したりしてすっかり満足していた。
 予備知識もなくただ道なりに「北宋汝窯」の部屋に入った。人数をさばくためなのか、細長い部屋の中央に二十数点もの作品を一列に展示し、それに沿って左右にひな壇がこしらえてあった。
並んだ作品はみな形も地味、色彩もほとんど同じ淡青色で、一般的なイメージである中国陶磁の派手さとはまったく無縁だ。
 しかし一点一点見て行くうちに、その色彩に何か説明の出来ない静けさと、深さと清らかさを感じて、虜になった。展示室を立ち去り難い思いがして、ひな壇の最上段に腰掛けた。
遠目に器(うつわ)を眺めるというよりは、ただこの器と同じ時空に自分も存在していることに心満たされていた。
お尻が痛くなってふと時計を見ると、一時間以上もそこに坐っていたようで、自分でも驚いた。
 日本に帰ってからもしばらくこの感動が後を引き、思わぬ副作用も経験した。
それ以来、日本や高麗のどんな青磁の名作にも感動しなくなってしまった。
どうにも色が「濁っている」と感じてしまうのだ。いいものを見るのは恐ろしいことだと思い知った。
 ようやくその印象も薄れて来たこの頃だが、前々回の本欄「水滴展」で東洋陶磁美術館を訪ねた時、館内の予告ポスターを見て、本展覧会のことを知った。
門外不出と思われていた汝窯水仙盆が四点も公開されるという。
あり得ない!きっと当館安宅コレクションの汝窯水仙盆一点に久しぶりに会いに来たのだろう。
 前世紀末から河南省で汝窯の窯址が発掘され、伝世の汝窯作品とは違う多種多様な作品片が発見されたが、それでもなお解明されない謎は多い。
「水仙盆」は水仙栽培用なのか、それともペットの猫の食器だったのか、それも不明だという。
 本欄の写真は白黒だが、どんなカラー写真も汝窯の色とされる「雨過天青雲破処」(雨上がりの雲間に見える青い空)の色を伝えることは難しいだろう。
会期も長いのでぜひ実物をご覧下さい。
公開は明日から。
  
 =1月はお休みを頂いて、次回は2月10日付(第2金曜日掲載)=
・ ・・・・・・・・・・・・・・・
かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。
メモ 大阪市立東洋陶磁美術館 大阪市北区中之島1−1−26。電話06(6223)0055。地下鉄御堂筋線淀屋橋駅から土佐堀川を渡り、東へ徒歩5分(大阪市中央公会堂東側)。http://www.moco.or.jp/
会期は12月10日(土)から来年3月26日(日)まで(年末年始および原則として月曜休館)。
 

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