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2016年11月12日 (土)

美ビット見て歩き 私の美術ノート *46 

毎月、奈良新聞の掲載を楽しみにしている、川嶌一穂さんの美ビット見て歩き 私の美術ノート は、奈良県立美術館でいまひらかれている展覧会です。
先日わたしも拝見したのですが、あらためて観るポイントが川嶌一穂さんの解説でよりよくわかります。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *46 川嶌一穂

 

奈良県立美術館 禅(ZEN)関連企画展「雪舟・世阿弥・珠光…中世の美と伝統の広がり」

 

写真 重要文化財「世阿弥自筆能本 江口」(部分)生駒市・寳山寺蔵=奈良県立美術館提供

 

 春に京都国立博物館で開かれた「禅ー心をかたちに」展をご覧になった方も多いと思うが、今年が臨済禅師1150年忌・白隠禅師250年忌にあたることを記念して開かれた展覧会だった。
 現在、奈良県立美術館で開かれている「雪舟・世阿弥・珠光…中世の美と伝統の広がり展」は同じく禅をテーマにして、地域を奈良に、ジャンルを水墨画(雪舟)と能(世阿弥)、茶の湯(珠光)の三つに絞った企画展である。
 秋を飛び越して初冬の寒さを感じる一日、世阿弥(1363?ー1443?)と禅との関係に興味を惹かれて訪れたら、65歳以上は観覧無料だった。年を取っていいこともある!
 会場を巡るうちに、世阿弥の代表的な能楽論「風姿花伝」の一部が、禅の公案のように「問ふ」「答ふ」という形式になっていることを思い出した。家に帰って確かめたら、その「第三 問答条々」の最後に、禅宗第六祖慧能(えのう)の偈文が結論として添えられていた。
 展示されている、娘婿の金春禅竹に宛てた手紙の中では、補巖寺(ふがんじ)住持の竹窓智厳(ちくそうちごん)の言葉を引いて、能の稽古の仕方を伝授している。
 田原本町にある曹洞宗の寺院・補巖寺は、今は無住ということだが、所蔵の土地台帳に世阿弥夫妻の法号と命日が記されていることが昭和三十年代に判明した。信仰、思考、生活面で、世阿弥が深く禅宗に傾倒していたことが実際の資料を見て実感できた。
 写真の世阿弥自筆能本「江口」は、簡単な漢字を除いてほとんどが片仮名で書かれている。台詞の右側に小さく「ハル」とか「下ル」などの書き入れがあるのは、謡い方の指示であろう。今でもよく演じられる曲で、少し詞章は違っているが大きな変更はない。
 これらは元々金春家に伝来したものだが、明治三十年代に宗家の弟が管長を務めていた縁で、生駒市の寳山寺に移管された。昨年、世阿弥の命日にあたる8月8日に、ある学会の見学会で拝見する機会を得たが、世阿弥や善竹の自筆文書が大広間に所狭しと並べられていて、とても感動した。
 奈良女子大学学術情報センターのHP上で「生駒山寳山寺所蔵貴重資料電子画像集」として、いつでも見ることができるのは有難い。またこれとは別に観世宗家に伝わった世阿弥自筆の能本類も「観世アーカイブ」で画像を見ることができる。
 600年も前に完成した能が、今なお世阿弥と縁ある家の役者によって演じられ、現代人によって鑑賞されている。鑑賞に飽き足らずに稽古に通う人もいる。さらに、世阿弥自筆の台本が大切に今に伝えられている。まさに奇跡と言うしかない。

 

 =次回は12月9日付(第2金曜日掲載)=
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かわしま・かずほ
元大阪芸術大学短期大学部教授。
メモ 奈良県立美術館 奈良市登大路町10−6。電話0742(23)3968。近鉄奈良駅から東へ徒歩5分(奈良県庁北側)。会期は11月27日(日)まで(月曜日休館)。

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