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2015年11月15日 (日)

美ビッド見て歩き*35

いつも奈良新聞で楽しみにしている川嶌一穂さんの美ビッド見て歩きは、「書」です。大阪府泉北郡忠岡町にある正木美術館とのことです。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *35 川嶌一穂

正木美術館 正木孝之生誕120周年記念「雪月花ー二つの白氏詩巻とともに」展

写真=国宝 小野道風筆「三体白氏詩巻」(部分)=正木美術館提供

 国風文化が成立したとされる平安時代の文学作品で、同時代(平安期)の古写本が最も多く残っているのは、何だと思われるだろうか。源氏物語か、それとも古今集だろうか?答えは、『和漢朗詠集』である(角川ソフィア文庫『和漢朗詠集』)。約千年前に藤原公任(きんとう)が、漢詩、日本人の詠んだ漢詩、そして和歌を集めた詞花集である。
 その下巻「交友」の部に
 雪月花時最憶君(雪月花の時に最も君を憶う)
という白居易の詩の一節がある。冬の雪、秋の月、春の花と言えば、日本的トキメキ景物の定番であるが、これが舶来の漢詩であるのが不思議だ。
 中唐の詩人・白居易の詩文は、平安時代初めから『白氏文集』として日本に伝わっており、和漢朗詠集に集録された詩句で最も多いのも、白居易の詩である。
 写真の白居易作「池西亭(ちせいのてい)」は、秋の満月(金魄)が、池の水面に浮かぶ様子を詠った詩である。一行だけ見える次の詩「吾廬(わがろ)」は、ささやかだけれど趣のある我が家を詠った七言律詩である。
 写真の詩二首を見て、何か気付かれただろうか。そう、書体が違うのである。この正木美術館所蔵、小野道風筆「三体白氏詩巻」の「三体」とは、言うまでもなく楷行草の三つの書体のことである。白居易の詩を二首ずつ、異なった書体で書くという面白い趣向の詩巻だ。小野道風と言えば、和様の書を確立したと言われる三蹟の一人であるが、楷書作品はこの一点しか伝来していないという。
 絵画と違って色彩の少ない書の作品は、複製と本物にそれ程の違いはないだろうと高を括っていたが、館内に入っていきなり目に入ったこの小野道風の書に圧倒された。堂々として、しかも伸びやか。本物が放つ迫力だろう。
 続いて、同じく三蹟の一人・藤原行成の筆になる「白氏詩巻」が並ぶ。行書の長大な巻物である。小野道風に私淑したと言われる行成は、二世代ほど後の人だが、すでに優美な日本の字だと感じる。
 この二つの国宝「白氏詩巻」の他に、雪月花に関連した作品が展示されている。尾形乾山「春山草花図扇面」、「春日鹿曼荼羅図」、雪村周継「瀟湘八景図巻」などに心惹かれた(会期中、巻替え、展示替えあり)。
 奈良から行くには、なかなか不便だが、日本の美意識の原点の一つである両作品をぜひご紹介したかった。呈茶席もあり、戦後すぐに建てられた正木邸の和室で、庭を見ながらお茶を頂くことができる。

 =次回は12月11日付(第2金曜日掲載)=
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かわしま・かずほ
大阪芸術大学短期大学部教授。
メモ 正木美術館 大阪府泉北郡忠岡町忠岡中2−9−26 電話0725(21)6000。
http://masaki-art-museum.jp南海本戦忠岡駅から徒歩13分。泉大津駅からタクシー7分。休館日は、基本的に水曜日。会期は2016年1月24日まで。

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