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2015年9月12日 (土)

美ビット見て歩き 私の美術ノート *33 

毎月楽しみにしている、大阪芸術大学短期大学部教授の川嶌一穂さんの「美ビット見て歩き」です。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *33 川嶌一穂

大和文華館 特別企画「中世の人と美術」展

写真=紙本墨画「松雪山房図」(部分) 室町時代=大和文華館提供

 世の中は「断捨離」ブームだが、私は「断たず・捨てず・離れず」をモットーとしている。片付けられないだけ、という家族の冷たい視線を浴びながらも、親の残した本はそのままだし、きれいな包装紙は捨てられない。
 断捨離は遊牧民の哲学であって、「不断・不捨・不離」こそが、日本の文化の本質と言っても過言ではない。釈迦生誕の地・インドでほとんど信仰されなくなった仏教も、発祥の地・中国で極端に簡略化されてしまった漢字も、二千年ないし千五百年近い時を経て、日本で根付いている。
 14世紀、南北朝時代に活躍した北朝方の有力な公家、中院道冬(なかのいんみちふゆ)が、日記「中院一品記(なかのいんいっぽんき)」を残した。朝廷や社寺、足利氏をはじめとする武家の動向を、十数年にわたって記した一級資料である。
 当時、紙は貴重だった。この日記も、道冬が受け取った手紙などの裏面が使用された。「不捨」である。しかし時代を経て元の手紙の資料的、美術的価値が見出されたりして、日記は裁断され、分散して所蔵された。大和文華館所蔵の「洞院公賢(とういんきんかた)書状」も、元はその裏面が「中院一品記」に使用されていた。
 会場には、「中院一品記」のうち、「洞院公賢書状」裏面の記事と連続する、東京大学資料編纂所所蔵の断簡が並ぶ。何と、江戸時代以来の再会ドラマである。
 今回は他に、道冬の生きた中世という時代の息吹を伝える優品が並ぶ。何度か見ている作品でも、新しい発見がある。雪村周継筆『自画像』は、賛文が左から右に書かれていることに気づいた。今まで全く賛を読んでいなかったのだろう。
 虎関師錬筆、墨蹟『法語』は、力に満ち、美しいと感じた。そもそもじっくり拝見したのは、今回がはじめてだ。禅僧の書は苦手だったが、鍛錬の末の自在な境地が伝わって来た。
 写真は、画面の上に「松雪山房記」と題する長文の賛が書かれた水墨画である。賛に、「清流に臨み、白雪の奇峰を窓外に眺め、松声を耳にする生活」を理想とし、それを画に描かせて座右に置く、とあるらしい。見ていると、何とも気持ちがすっきりとする。暑い時にこそ、そばに置きたい絵だ。
 山野の自然な趣を残した庭も、大和文華館を訪れる楽しみの一つ。8月の終りに訪問した時、コムラサキの実が色を着け始めていた。季節は確実に推移している。 

=次回は10月9日付(第2金曜日掲載)=
・ ・・・・・・・・・・・・・・・
かわしま・かずほ
大阪芸術大学短期大学部教授。

メモ 大和文華館 奈良市学園南1−11−6。電話0742(45)0544。月曜日休館(21日は開館、24日が休館)。会期は10月4日まで。9月20日午後1時から同館講堂で、シンポジウム「文化財を守り、未来へ伝えるためにー「中院一品記」修理事業からー」が開かれる。

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(画像をクリックすると拡大します)




 

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