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2015年8月15日 (土)

美ビット見て歩き *32 入江泰吉 「昭和大和のこども」展

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いつも楽しみにしている川嶌一穂さんの
美ビット見て歩き 私の美術ノート *32 は奈良市写真美術館 入江泰吉「昭和大和のこども」展です。わたしも今回二度見に行きました。おすすめの展覧会です。

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写真=奈良市高畑町界隈(正面奥は御蓋山)=著者撮影

 

 数年前、奈良の草花に詳しい友人から、花見の穴場を教えてもらった。
東大寺大仏殿の東南にあたる東塔跡である。
それから毎年花の季節に訪れるようになった。
ある年は夕陽に染まる満開の花に、またある年は狂ったような花吹雪に迎えられた。
それが今年の春に訪れた時は驚いた。
狭い場所が外国人観光客でいっぱいだったのだ。
ネット上で情報が流れたのだろう。
徐々に、というレベルではない。一気に増えたのだ。
観光客の増加に対応したものか、樹を何本か切り倒して新しい道も工事中だった。
ともかく騒がしいので、花を楽しむどころではなかった。


 奈良町も今のように有名になる前がよかった。
あの頃は、まだ自分の美しさに気付いていない少年少女のように、町が凛とした魅力を放っていた。
 毎年花を楽しみにしていた近所の梅の木が伐られたり、よく行く店が閉店したりするのは仕方のないことだろうが、好きなものは、言わば自分の一部なのだと思う。

 今回ご紹介する高畑町界隈は、まだあまり観光客を見かけない、私の大切な場所の一つだ。
奈良交通市内循環バスの破石町停留所で降りて、そば屋さんの角を東へ入る。
格子の美しい町家や練塀に囲まれた大きな家並が続く。
古びた立派な石垣が、もと春日大社の社家町だった歴史を物語っている。
 写真美術館への案内板で曲がらずに、新薬師寺まで行って、右手の鏡神社に回り込む道がお勧めだ。
急に眺望が開けて、風景が一変する。
そこに高さを抑えた、瓦屋根の美しい写真美術館がある。


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 (2015.8.14鹿鳴人撮影)


 現在「モノクロスナップ写真の魅力」と題して、入江泰吉「昭和大和のこども」展などが開かれている。
仏像や風景写真で有名な入江が、戦後の奈良の子どもを撮った40代の作品。
写真に切取られた街並は貧しいが、子どもの顔はとても表情豊かだ。
 正真正銘モト「昭和大和のこども」の一人として、忘れていた様々な時間が蘇った。
女の子の髪型は「サザエさん」に出て来るワカメちゃんと同じ「刈上げ」と相場が決っていて、散髪屋で襟足を刈る間、ずっと下を向いているのが辛かったことを突然思い出した。

 「遊ぶ子どもの声きけば我が身さえこそゆるがるれ(梁塵秘抄)」という歌が聞こえて来るような入江の写真。
それを見ながら、まだ貧しかった戦後すぐの日本を思い出すのに、この猛暑の八月ほどふさわしい時はないと感じた。広島、長崎の原爆忌に続いて、明日は七十回目の敗戦記念日。合掌。 

 

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かわしま・かずほ
大阪芸術大学短期大学部教授。

 

メモ 入江泰吉記念奈良市写真美術館 奈良市高畑町600−1。電話0742(22)9811。http://irietaikichi.jp/ 月曜日休館。会期は8月30日まで。

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入江泰吉さんの「昭和の奈良大和路」という本も入江泰吉記念奈良市写真美術館から発行されています。光村推古書院。2000円+税。雑司町で友人のH氏の弟さんが向かいの女の子と歩いている表紙の写真が印象的です。

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コメント

 川嶌先生が書かれている新薬師寺や奈良市写真美術館への道は、私も好きなコースです。
 「春日大社宮司職舎」の表札がかかった建物もありますね。かつての楽人長屋を思わせる土塀にも趣があります。
 『昭和の大和路』は、入江先生の違った面が楽しめる名著だと思います。

やいちさん。コメントありがとうございます。高畑界隈は良い雰囲気が残っています。きょうは高円山の送り火です。写真美術館あたりからは真近で良く見えると思います。

やいちさん
読んで下さって有難うございます
「春日大社宮司職舎」の表札は気付きませんでした
写真の土塀は、わたしも奈良ホテル下の楽人長屋の昔の塀を思い出しました
戦後すぐの子ども、と言うと、即わたしの世代なんですが、入江さんも、その頃、行き詰まっておられたらしいのと、もう一つは、子どもが笑顔で遊んでいる、という風景そのものが、戦争中は見られなかった事かと思いました
新薬師寺は、いつか改めて取り上げたいです
また色々お教え下さい

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