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2015年6月14日 (日)

美ビット見て歩き 私の美術ノート *30 十輪院

いつも楽しみにしている川嶌一穂さんの美ビット見て歩きは、ならまちの十輪院です。わたしごとながら、十輪院、橋本純信住職とは幼稚園から高校卒業までご一緒でした。

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美ビット見て歩き 私の美術ノート *30 川嶌一穂

南都 十輪院

 中学の修学旅行で長野県のお寺に行った時、「重要文化財」という説明書きを見て、生意気盛りの私たちは、「何や、重文か…」と言って、ろくに拝見もしないで通り過ぎた。周囲に国宝がたくさんあるので、鈍感になってしまったのだろう。
 
奈良町の一角にさり気なくたたずむこの十輪院も、本堂は国宝である。南面する四脚門をくぐって境内に入る。石畳の参道両側に置かれた蓮の鉢が涼しげだ。本堂正面の蔀戸(しとみど)を吊り上げているので、障子の白と下半分の格子との対比がとても美しい。

軒下は垂木(たるき)がなく、厚い板を並べた板軒が、面取りをした角柱や簡素な蟇股(かえるまた)とあいまって、軽やかで優美な雰囲気を作り出している。深い軒で守られた広縁に上がって庭を見ていると、ふと、昔ここでみやびな恋愛模様が繰り広げられたような気がした。

 それもそのはず、本堂は、奥の地蔵堂にある本尊仏を拝むための礼堂で、仏堂というより鎌倉時代の住宅の様式を色濃く残しているそうだ。

 いよいよ地蔵堂に進む。向かって左の釈迦如来と右の弥勒菩薩が、中央奥の本尊・地蔵菩薩を囲んで立つ珍しい石仏だ。三体とも実に表情豊かな、優しいお顔である。  
間の壁や柱を埋めるように、十王像、天女像、五輪塔や金剛力士像が線刻されている。子どもの描いた絵のように、素朴で生き生きとした姿だ。

 梵字も多く彫られているが、十二宮、七星、九曜などの星を表す種子(しゅじ)らしい。つまりこの龕(がん)全体が宇宙そのもので、釈迦入滅後から弥勒出現までの仏のいない間に、地獄に墜ちた亡者を救うために地蔵菩薩が出現する様子を、形として現したものだ。

もとはお堂もなく、露天にあったので、きっと庶民もお参りできたことだろう。  この石仏群も鎌倉時代初期の作。武家が政権をとり、南都も焼討ちにあった大変革期である。

 龕の奥の本尊地蔵菩薩像鎌倉時代の世の力みなぎる(猪股静弥) 

なお、東京国立博物館の構内にある「旧十輪院宝蔵」は、明治時代初期に流出した経蔵である。確かにこの境内にこそふさわしい、小ぶりで姿のいい校倉造りのお蔵であった。  

十輪院は、本堂での朝の勤行に誰でも参加できるし、近鉄奈良駅近くに、写経や瞑想のできる「みんなのお寺」(仏教相談センター)を設けている。先日立寄って、お坊さんとおしゃべりしたら、仏教二千五百年の知恵に少し触れたような心地がした。 
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かわしま・かずほ 大阪芸術大学短期大学部教授。

メモ 十輪院 奈良市十輪院町27、電話0742(26)6635。http://www.jurin-in.com 市内循環バス田中町下車、北へ徒歩3分。拝観時間、午前9時—午後4時半。月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日)、年末年始、1月27・28日、8月後半は閉門。

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境内点描(2015.6.13撮影)。右上は、魚養塚です。

十輪院のhpでは、動画で境内の様子や住職のお話をくわしく見ることが出来ます。→http://www.jurin-in.com/

追記  友人のやいちさんからのコメントです。

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「川嶌先生が、お父さんの詠まれた歌をさりげなく引用されているのが微笑ましいですね。
 東博にある「旧十輪院宝蔵」、法隆寺宝物館の北にあり目立たないのが残念です。《確かにこの境内にこそふさわしい 》と書かれているとおりだと思います。」

そして友人のかぎろひさんからのコメントです。

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「東博にある旧十輪院の宝蔵、こぶりで優美だったのが印象に残っています。全体像をやいちさんがアップされましたので、腰にはめられた石の線彫を。」

やいちさん、かぎろひさん、ありがとうございます。

 

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コメント

おはようございます。

追記でのご紹介をありがとうございます。
フェイスブックはあまり積極活用できていないのですが、ブログとは違う楽しさを感じました。

線彫りが不明瞭で申しわけありません。大きな画像でお送りしようかと思ったくらい(笑)

十輪院さんも、大好きです。

やいちさん、かぎろひさん。早速の写真そしてコメントありがとうございました。すばやく、東京国立博物館で撮られた写真がでてきるのはすごいですね。またよろしくお願いします。

やいちさん、かぎろひさん
コメント、有難うございました
十輪院さんは、いつもきれいに掃除されていて、ほんとに気持ちいいですね
5月の終わりにお邪魔したとき、境内の菩提樹が花盛りでした
東京の経蔵の写真、有難うございました
よくぞ保存されていたことですね。ぜひ中も見てみたいです

やいちさん
父の歌、気が付かれましたか^^;
偶然なんですが、原稿をあそこまで書いて、他のことで調べものをしていたら、あの歌を見つけて、まあ同じ発想をするものかな、と驚いた次第。というわけで、もういいやと忍びこませました。失礼しました@@

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