アレックス・カー著「ニッポン景観論」
奈良まほろばソムリエの会などでお世話になっている、Nさんからの
「おすすめします。アレックスさんが3冊めを出版。
数年前に河瀬監督の『国際映画祭』シンポジウムでお会いしたアレックス・カーさんですが、前職(会社の社内報)でインタビューに応じて頂き、すっかりファンになりました。この本も写真が多くつかわれ読みやすいですね。少々辛口コメントですが、必要なことでしょうね・・」
というおすすめで、書店で、アレックス・カー著「ニッポン景観論」を見つけましたので早速買って読みました。1200円プラス税。
集英社新書ヴィジュアル版で、写真を多用されて、この景観は問題ないですか?と具体的に提示されています。
終章で
「これからは国土の大清掃の時代です。日本中の河川と海岸に作られた、不要なコンクリートの護岸をはがしましょう。先進国の常識になっている電線埋設を徹底してやりましょう。美しい川の上に架けられた高速道路を別の場所に移し替えましょう。今までの倍の予算に増やしてもいいから、汚くなったお座敷を掃除しましょう、といっているのです。」
「行政システムの旧態依然はいまだ変わらず、2020年の東京オリンピックに向けた建設ラッシュで、国土がさらにダメージを受けることが懸念されますが、その一方で国民の意識は確実に良い方向へと変わり始めています。町だけでなく、山、森林、海岸に対しても、新しい保全の動きが全国的に芽生えており『美しき日本』に向かって新しい希望が生まれているのです」と語られています。
わたしもおすすめしたい1冊です。
著者プロフィール
アレックス・カー(Alex Kerr)
東洋文化研究者。1952年、米国メリーランド州生まれ。64年から66年まで、父の赴任に伴い、横浜に住む。74年、イェール大学日本学部卒業。72年から73年まで 慶應義塾大学国際センターで日本語研修。74年から77年まで英国オックスフォード大学でローズ奨学生として中国学を専攻し、学士号と修士号を取得。73年に日本の「三大秘境」の一つである徳島県祖谷(いや)で300年前の茅葺き屋根の農家を購入し、「篪庵(ちいおり)」と名付ける。77年から京都府亀岡市に居を構え、外国人に伝統芸術を紹介するプログラム、書や古典演劇、古美術蒐集など、日本文化の研究に励む。86年から93年まで米トラメル・クロー社(当時アメリカ最大の不動産開発会社)の日本代表を務める。90年代半ばからバンコクと京都を 拠点に、東洋文化に関する講演、通訳、執筆活動を行う。美術展示、伝統舞踊、 茶の湯、華道、書などの文化イベントの総合プロデュースも多数。2000年代に京都の町家が壊されていることを懸念して、9軒を修復して宿泊施設として開業。 2010年から景観と古民家再生のコンサルティングを地方に広げ、祖谷、長崎県小値賀(おぢか)町、奈良県十津川村などで十数軒を改修して、滞在型観光事業を営む。著書『美しき日本の残像』(93年、新潮社/2000年朝日文庫)で94年の新潮学芸賞を受賞。英訳は『LOST JAPAN』として刊行され、99年にはイタリア語とポーランド語でも翻訳出版された。02年には『犬と鬼』(講談社)を刊行。同書のオリジナル『DOGS AND DEMONS』は、01年にアメリカで初版が発行され、韓国と中国でも翻訳された。
(追記)
まちづくり団体の知り合いも以下のように読後感想を述べられています。
「アレックス・カーさんの『ニッポン景観論』(集英社新書)を読んだ。景観を含むまちづくりNPOに関わっているわが身にとっても手痛い苦言だ。日本が好きだからこそ、各地の景観を写真にして批判されている。それは“ゾーニングと景観配慮のなさ、町へのプライドの低さ、無秩序な開発、奇抜なハコモノの増加、硬直した建築規制のおかげで、日本はどの町も混沌とした状態で発展しまった”、”住民が自分の町にプライドをもっていないからだ”と指摘しています。
勿論、批判するだけでなく、自ら祖谷や小値賀などで古民家再生の事例も詳しく紹介し、外国からの観光客が日本の何を求めて来日しているか、〝日本の競争相手は国内の観光地ではなく世界なのです”と指摘している。やっぱり手厳しい!」
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