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2014年9月21日 (日)

「比較文化私論ー当世学生気質」 大阪芸術大学短期学部教授の川嶌一穂さん

先日奈良ロータリークラブで、毎月「美ビット見て歩き」を書かれている大阪芸術大学短期学部教授の川嶌一穂さんのお話がありました。たいへん興味深い話でしたので紹介します。

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皆さま、こんにちは。今日お話させていただきますのは、「比較文化私論当世学生気質」というタイトルで、私の専門という事で、できれば海外のものと比較して、現在の学生の問題点などをお話させていただきたいと思います。

 

1 「ゆとり教育」
 
 1998年の学習指導要領改正(ゆとり教育の本格的開始)
 
  (1987年度生まれが、中3からゆとり教育)
 
  2008年の改正(ゆとり教育の終焉)
 
  (2004年度生まれが、小1から脱ゆとり教育)

 

教員になりましてからここ30年近く、あれよ・あれよという間に学生の学力が下がってまいりました。分かり易い例として、今の1年生がこう言った事を申しておりました。

 

三つ違いの妹の教科書が私たちの頃より1.5倍ぶ厚い、ということを言っておりました。1.5倍って凄いと思うんですが、それは量だけの話ですけれども、必ず質も伴って1.5倍。この10年間20年間はそういった教育を受けているという事なんです。

 

ゆとり教育の中身は皆さんよくご存知だと思いますけれども、それに伴って完全5日制になったり、今問題になっておりますのは、OECDの国際比較のテストが、PISAなんかで日本の順位が下がっております。

 

もちろん良い点も有り、私なんかでは考えられないくらい、とても素直で天真爛漫なんです。最初は呆れ返っていたんですが、最近は凄いなと思うようになりました。怖いもの知らずです。

 

 

 

2 「ゆとり世代人格的側面」

 

  「断崖」の世代? カフカの「返信」?

 

私は授業で、ある日「私たちは団塊の世代」と言われているけど、漢字書ける人?と聞いたら、「ハイ」と言って、女子学生が書きに来てくれたんです。そしたら黒板に大きく「断崖の世代」って書いてくれたんです。確かに、私たちこの3年間の世代の社会福祉をどうするか、まるでアフリカの大発生したバッタの如く言われていますので、「団塊の世代」と言うより「断崖の世代」の方があっているなと思うんです。私たち「崖っぷち」だな、日本にとっても「崖っぷち」だなと思うので。これが私の大好きな学生の間違いでして、辛いとき悲しい時は、この「断崖」っていう字を思い起こしては癒されています(笑)。
 
「それは、お宅の大学のレベルがそういう事と違うの」って、きっと思われると思うんですけれども、最近こういうトークを若い人は「あるあるトーク」と言うらしいですが、私たち同業者が集まりましたら、「こんなに酷い」って話になります。

 

また私が大好きな、これは関西のある国立大学のドイツ語の先生なんですけれども、「最近の学生って、レポート書いて、見直しもしないのかな。この間はカフカの「変身」を、「返信」て書いてたわ」って呆れておられたんです。 ということで、今日は、今の世代の一般的な話としてお聞き頂けたら有り難いと思います。

 

3 「人は生まれて来る時代と場所を選ぶことはできない」
 
  小中学校「社会科」として小6と、主に中1、2で世界史と関連づけて     
 
  高等学校地理歴史科のうち「世界史」必修。「日本史」・「地理」選択
 
 
 
  台湾故宮博物院八十周年記念「大観展」2005
 
  アメリカ合衆国、忠誠の誓い
     I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the    
     Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty
     and justice for all.
 

 

学生が去年こんな事を言っておりました。「ゆとり・ゆとりってほんまに嫌やわ。私らがおばあちゃんになった時、孫に、おばあちゃん知らんよな、<ゆとり>やもんなぁ、ってきっと言われる」って。私はさすが凄いなと思って聞いていたんですけれども、全く彼らのせいではありません。

 

これは私も含めて日本人全体の問題点かなと思うんですけれども、他の国から来た留学生とか、旅先で話をした人たちと比べますと、日本人はどうも、外交を見てもそうですけども、自信がない・プライドが無い。文科省は、生きる力を付けるためのゆとり教育、と言っていました。しかし、プライドこそが、生きる力じゃないかと思います。どうしてこんなに誇りのない人間になってしまったのかと思います。
 
台湾故宮のお宝で、北宋から南宋の山水画の名品ですが、大きな作品3点が一つの壁に並ぶのは、これまでも無かったし、今後もないという展覧会がありました。その作品の前で、小学生のグループが、30分以上もじっと学芸員の説明を聞いていました。台湾政府は、北京故宮から文物を何百箱も命がけで運んで、結局それが中華民族としての正当性の証しだという事で、若い人たちにその価値を伝えているんだな、凄いなと思いました。
 
今年来ている韓国の留学生に、韓国の歴史は必修?と聞いたら、必修です、と。そのほかの事も聞いてみましたら、小学校の1年生から、何と週1回、古典・古文をやっているというんです。論語、それから春秋とか四書五経の事も言っておりました。韓国はそういう感じです。  そしてアメリカ合衆国の「忠誠の誓い」というのを、皆さまもよくニュースなんかで目にされると思いますけど、暗唱して国旗に向かって、そして右腕を左胸において、男性は帽子をかぶっていたら必ず脱帽して左肩に掛けるという、国旗に対する忠誠の誓いです。
 
これは特別な例ですが、ある学生は、平安時代と鎌倉時代と江戸時代の順番が分からないんです。「だって、日本史、取ってないもん」って言うんです。その時に、私は日本史が必修じゃないことに初めて気付きました。それがいつからか調べてみましたら、小学校の6年生と中1・中2では日本史という教科ではありませんけれども、「社会科」という中で、初歩的な日本史を必修としてやっているようです。特に中1・中2では世界史と関連づけて、という但し書きがあるそうです。そして何と、私は必修だと信じて疑わなかったのですが、高等学校の社会関連は、「地理・歴史科」と「公民」に分かれていて、そのうち「世界史」が必修で、何と「日本史」は、「日本史」か「地理」を選択するというシステムに、今なっているそうです。これは今回調べて、1994年からと書いてありましたので、もうまる20年もこういった状態が続いているという事です。ほんとに平安時代・鎌倉時代・江戸時代の順番が分からなくても仕方ないなって、愕然といたしました。結局プライドが無いということは歴史を知らない、歴史を知らないって事は必修じゃないんですから、これはもう彼らのせいではないんです。

 


 
4 「人はどこから来てどこへ行くのか」

 

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ドイツ・アイゼナッハ・ヴァルトブルク城 2013年10月

 

去年ドイツで学会があった時に、1日余裕がありましたので、アイ ゼナッハのヴァルトブルク城に行って来たんですけれども、この天井画はモザイクです。中に入るには、このツアーに参加するしかないんですが、この右の下に立っておられるのがガイドさんで、一室ずつ、此処に入って最後の人を確認して閉めて、そしてこのガイドさんの説明が始まるんです。私はたまたまこの方に当たったんですけど、丁度年齢的に大学の院生くらいの感じでした。とってもプライドを持って、これは18世紀の、此処は19世紀のって説明して下さるんですけど、その熱意たるやもう凄いので、心を打たれました。私は心の中で、18世紀か、19世紀か、新しいな、と思って見ていましたが、ああいう若い方が自分の所の世界遺産を、あれだけ誇りに思って、外国から来た方にガイドされているのは、いいなと思いました。

 

京都・奈良には国宝・文化財が沢山ありますのに、それをガイドさんが、本当にその良いところ、その意味、それだけ伝えられてきたその価値をちゃんと説明してくれているのかと、町で出会った外国人の団体なんかを見ましたら、ちょっと危惧するところです。

 

そして何よりも資格のある者しか有償のガイドはできないというイタリアのガイドのシステム、それからここに写真を載せていただきましたドイツでの明るいガイドさん。それは勿論第一義的には雇用の創出ということだと思うんですけれども、いちばん良いのは、若い人が本当に自分の国の文化に触れ、それをプライドを持った形で人に発信できる。そこが雇用の創出よりも、もっと素晴らしいという感じを今回受けました。

 

そしてよく歌舞伎の方が「歌舞伎を世界に発信したい」と言ったり、「和食を世界遺産に」と言っておられますけれども、私はもっと足元を見てほしい。歌舞伎を見に行っても、若い人はほとんどいません。家で、ちゃんと出汁をひいた和食を食べている日本人もおそらく殆んどいないと思うんです。

 

ですから世界に発信するよりも、勿論それも貴重なお仕事ですけれども、若い人に伝えていかないと、もうちょっと手遅れかなと思うんですが、若い人がこれだけ日本の事を知らない、知らないがためにプライドを持てないというのは・・・。何よりも若い人に、京都・奈良に昔は必ず修学旅行で来たように、日本の事を知らない日本の若い人に伝えていけたらなぁ~と思います。私も授業の中で、できるだけ日本の事を伝えようと、ささやかな努力をしております。

 

散らかったお話で申し訳ありません。ご清聴ありがとうございました。

 

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