上野誠「万葉びとの宴」そして近況
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近鉄奈良駅近くの啓林堂書店で、奈良大学教授の上野誠先生の「万葉びとの宴」というこの4月に出たばかりの講談社新書を見つけました。
宴会や短歌のやりとりについて、上野誠先生のおもしろくて、わかりやすい講義が展開されています。
万葉集にとりあげられている歌はこのような「宴会」の中で交わされた歌もあるということです。そういうことをふまえると、万葉集も理解しやすく思いました。
講談社新書、本体800円。
(以下、上野誠の万葉エッセイhttp://www.manyou.jp/より)
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主人と客はお互いを気遣って称え合う。
盛り上げ上手の芸達者はあちこちでお座敷がかかる。
途中で抜ける時はマナー違反につき下手に出たり……。
思わず親近感が湧いてくる古代の人びとの宴会を、実況・解説!
<本書の主な内容>
プロローグ――「うたげ」とは
第一章 宴と歌の関係
『古事記』の「酒楽之歌」/歌い踊って造った酒とは/国家存亡の危機 ほか
第二章 額田王の媚態
「ご下問」が出た――/言を左右にする額田王/聞き手を楽しませる工夫 ほか
第三章 天平知識人たちの雅宴
梅花の宴の歌群をどう読むのか/最先端の文学/心をつかむということ ほか
第四章 『万葉集』の最後の歌
「朝賀」は「みかどおがみ」/郡司と宴会でコミュニケーション/いやしけ吉事 ほか
第五章 雪かきして酒にありつこう
景色を宴で歌う意味/新年の雪は吉兆!/大伴家持の後悔/生き残る知恵 ほか
第六章 正月歌の型とその工夫
同僚の宅での新年会/氏族の人びととの新年会/主人あっての客/お正月はたいへんだ ほか
第七章 宴会芸の世界
型と型破り/ミスター右兵衛/芸人と芸名の発生、その原初的形態/ゲームのルール ほか
第八章 愛誦歌、おはこについて
「恋の奴」とは?/もてない男のぼやき節/三枚目の笑いが宴を盛り上げる ほか
第九章 宴の流れ
今度は自分たちが楽しむ番だぜ/“きれいどころ”がいる宴/「ウカレメ」とは何か ほか
第十章 宴のお開きにあたり
この無礼、死をもって償うべし/我酔ひにけり/宴を途中で抜ける時は ほか
エピローグ――宴の文化論
宴は日本文化の原点
ともに酒を飲み、あい歌い、和することこそ、政治の原点ではないのか? そして、どのように席次を決めるのか、それはホームパーティーにおいても、国賓晩餐会においても、悩ましい政治問題だ。まさに、政治の原点。そもそも、日本の芸術は、その源のすべてが宴にあるといっても過言ではない。客をもてなすための工夫に由来しているのである。(中略)だとすれば、宴について考えることは、日本文化について考えることにつながってゆくはずだ。(「プロローグ――『うたげ』とは」より)
難易度 Cクラス
(引用終わり)
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そんな折、上野誠先生から1枚の葉書が届きました。
この4月1日より 国際日本文化研究センター研究部客員教授(京都)と東アジア古代学会(ソウル)の副会長を拝命 兼任することになりました。奈良大学を本務校としつつ新しい研鑽のチャンスを得たことになります・・・。
とのことです。
そしてお母様の一句でしょうか、
子には子の 夢を羽ばたかせて 鳥雲に 上野繁子
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ますますのご活躍を祈念申し上げます。
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