興福寺中金堂復元工事、研修と見学へ
先日、「古代建築復元(第一次大極殿復元工事から興福寺中金堂復元工事」の研修と見学の会にまほろばソムリエの会からお誘いがありましたので参加してきました。
講師は株式会社瀧川寺社建設顧問の 國樹 彰さんでした。
最初に1時間ほどスライドを使った講義がありました。
國樹さんは国による平城宮跡の大極殿を復元指揮され、そして今回、興福寺中金堂の復元に所長として携わっておられます。
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復元の根拠
・今回の興福寺中金堂は、基壇の発掘調査で、版築、礎石、周囲排水路から柱の位置・柱間・軒の出などはわかっている。
・文献(資財帳等)
・同時代の様式 天平時代の現存寺院(奈良時代末の唐招提寺金堂のみ)
・天平尺は29.54cm。
木工事
材料の調達
・軸部材は中央アフリカよりアパ・ドーシェ(アフリカ欅)
特徴は重くて硬い。
・組物、小屋組材はカナダバンクーバーより米ヒバ
・全体で約2400㎥必要。
柱の加工は最初8角→16角→32角→64角で丸にしていくということでした。
また原寸引き付け図といって、設計図を元に1分の1の図を作成し、各部材の詳細な形状を作図・検討を繰り返しそれぞれの型板を作成して木材に型をうつして加工する、つまりすべて原寸の図を書き起こして実際に作る、という作業をおこなうということでした。
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そしていよいよ現場へいきました。手前が事務所や資材を置いたり加工するところ、奥が復元する中金堂を覆う素屋根の建物です。
全員ヘルメットをかぶり、金堂内部へ、そして1層目、さらに一番上の2層目へ。それぞれの場所で説明を聞きました。写真も撮りましたが残念ながらWEBなどでの公開はしないようにとのことでした。いただいた資料で現在の様子です。
もう瓦を葺くところまで進んでいるということでしたが、まだまだ工事もあり、壁などの漆喰の乾燥、塗装、などにも時間がかかるので完成は平成30年ということでした。
ところで平城宮跡の大極殿は材料をすべて国産で、しかもすべて昔の工法でということだったので総工費200億円かかったということです。ほぼ同じ大きさの今回の興福寺中金堂は基壇こそ国費ですが、建物はすべて興福寺で負担ということだそうです。国内産の材料はあまりないので、海外の材料も使っているがそれでも全体的は総額60億円かかるということでした。興福寺ではいまも寄進所が設けられており、日々寄進を求められています。
一番上の二層目の軒の高さから外を眺めると、五重塔と東金堂です。こんなところから写真を撮ることはめったにありませんので、1枚撮りました。なかなか有益な研修でした。
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