奈良に住んでいると、なかなか奈良の旅館に実際に泊まる機会はありません。そんな中、奈良まほろばソムリエであり学校の先輩でもある、もと喫茶アカダマのOさんから、奈良まほろばソムリエの会の有志で昼間の忘年会のお誘いがあり、奈良市東寺林町の松前旅館にはじめて訪れました。
入り口はそれほど広くなく、商売では何度か出入りさせていただいていましたが、お座敷にはじめて上がりました。
お座敷正面には能舞台にある老松の絵がありました。そして女将さんから、その説明をうかがいました。能の舞台の松は、春日若宮おんまつりの一の鳥居をすこし東に行ったところにある「影向の松(ようごうのまつ)」が最初と聞いています。毎年おんまつりのお渡り行列で、この松の下で松の下の儀が行われます。
松には神さまが宿っておられます。その松を後ろにして能は演じられます。いわば、神さまにお尻を向けて演じます。が、この松は鏡に映っている・・・・、すなわち能を演じる人は眼の前におられる神様(松)に向かって演じる。ほんとうの神さま(松)は眼の前におられ、鏡に映った松、これは鏡なのだ、というお話でした。
そして、この松前旅館に泊まれた有名な画家の方が「子島曼荼羅」を描かれたときに、4年ほど松前旅館に逗留されていたそうです。そこでその富沢千砂子さんに描いてもらったそうです。しかも、板だけ用意してくださいということだったそうです。そして、富沢千砂子さんは絵の表面には署名はされなかった、板の後ろに書かれたということでした。署名があると松を見ずに名前ばかりみがちだからということです。また美術品の修復などされる技術者の方は名を書きつけられないそうです。そして照明を落とすと、金の彩色がくっきりと浮かび上がり立体感のある、老松が見えました。
そしてこの老松は二十四の塊、「久」という字という正式の松の絵の作法にのっとって描かれているということです。
コラムにできた頃の様子が書かれています。→コラム。
また、こちらの松前旅館では、狂言の大蔵流(漠然と名前は知ってはいましたが、日本の狂言の和泉流と並ぶ宗家だそうです)のお稽古を毎週木曜日されていて、また子供を集めた狂言会もしているということでした。
狂言についてもいろいろお話をうかがいました。
そういえば、松前旅館から東へ80mくらいのところにある、ならまちセンターのこの秋のナイトカルチャーでも、大蔵流狂言が演じられていましたが家元の息子さんが演じられたそうです。
ちょうどこの12月15日から春日若宮おん祭りが始まります。17日にお旅所では、金春流の能「翁」と大蔵流家元の大蔵弥太郎さんの狂言「鈴の段」とづづけて「猿楽」ということで演じられるということです。
そんなお話を聞いたあと、昼間の忘年会では、つぎつぎとおいしいお料理をいただきました。(上記には後日再訪問して写真を撮らせてもらったときに聞いたことも加わっています)。当方がおさめている食器も登場しました。
奈良のまちなかの松前旅館は、すぐ近くにある良い旅館であると認識した次第です。外国の方もよく泊まられるそうです。おすすめの宿です。松前旅館のhpです→http://www.matsumae.co.jp/
松前旅館
〒630-8362 奈良県奈良市東寺林町28-1
電話(0742)22-3686 FAX(0742)26-3927
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