「野に遊び 人に学ぶ」
奈良新聞コラムに連載73回、-私の「明風清音」集-足かけ7年、綴り続けた”古都のエッセー集”、と本の帯に書かれています。
著者の猪股静彌氏は、大正13(1924)年大分県出身、奈良に50年以上住まわれたアララギ派の歌人です。同時に、奈良市立の一条高校の国語などの先生を34年間つとめられ、その後帝塚山短期大学でも長らく教えられた方です。寧楽短歌会代表、平成21(2009)年9月8日長逝。
ときどき奈良新聞で掲載されていましたが、昨年末1冊の本にまとめられました。平成15年から亡くなられた昨年まで、毎月1回、奈良のこと、出かけられたところ、出会われた人、など実に広く、かつ深く、読みやすく書かれています。奈良のあちこちを歩かれた行動力、そして歴史を掘り起こされたり、実に深い教養と滋味あふれるお人柄がにじみ出ている珠玉のエッセイ集といえます。とくに猪股先生の一文がなければ歴史の片隅に、忘れ去られるような事柄、人のことを取り上げられていることを感じます。
「郷土を見つめ、万葉のことばの森を歩く・・・」として多数の人が登場します。名前を存じ上げている方でいえば、土屋文明、小清水卓二、北見志保子、井真成、鑑真和上、正岡子規、など・・・そして数多くの名前も出ない人のことを。
奈良のことを、そして、万葉集の歌などがちりばめられ、絵はご自身の「四季万葉の植物」からササユリなど植物が描かれています。
わたしはときどき著者の歌(毎日新聞やまと歌壇の前の選者でした)や著作を、新聞で拝読し、生前に一度だけお会いできました。奈良のことを深く知り味わうにはぜひおすすめの1冊です。
奈良新聞社発行。176ページ。税込み1365円。アマゾンでの紹介です。
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